J1デビュー戦で確かなインパクト! 浦和の17歳MF早川隼平が示した可能性。目を引いた車屋紳太郎とのバトル

2023年04月24日 松尾祐希

絶妙なタイミングでスルーパス

J1デビュー戦で躍動した早川。(C)SOCCER DIGEST

[J1第9節] 川崎1-1浦和/4月23日/等々力陸上競技場

 2種登録でプレーする17歳が、またしても大仕事をやってのけた。

 4月19日に行なわれたルヴァンカップのグループステージ第4節・湘南戦(1-1)で、クラブ史上J公式戦最年少ゴールをマークしたMF早川隼平が、4日後の川崎戦でも得点に絡む働きを示したのだ。
【PHOTO】浦和の出場16選手&監督の採点・寸評。指揮官の采配的中。同点弾に絡んだ途中出場の早川&リンセンを高評価
 出番は0-1で迎えた80分。左サイドハーフで投入されると、ファーストタッチで魅せる。81分、左サイドで相手のギャップを突いて味方からのパスを収める。2人に囲まれたが、上手く身体を入れ替えて前を向くと、絶妙なタイミングでスルーパスを通す。同サイドでボールを受けたMF安居海渡が折り返し、最後はFWブライアン・リンセンがネットを揺らした。

 出場わずか1分で同点ゴールをお膳立てした早川は、昨季からトップチームに帯同し、同シーズンは開幕戦と3節でベンチ入りを経験。クラブからの期待値は高く、年代別の代表にも継続して招集されてきた。

 そのなかで今季はキャンプからトップチームでプレーし、4月5日のルヴァン杯・川崎戦(GS3節/0-0)でJリーグデビュー。そして、先述の湘南戦で先発に抜擢され、43分に同点弾をゲット。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで結果を残し、今節の川崎戦でついにJ1初出場。

 前日にベンチ入りを伝えられた早川は、「なんか残せればいいと考えていたけど、それ以上にチームの勝利に貢献できれば思っていた」。1点ビハインドで残された時間は10分。プレッシャーがかかる状況下でも慌てず、持ち前の推進力を発揮してゴールに絡んだ。

「今日はベンチの選手が力になってくれた」とはマチェイ・スコルジャ監督の言葉。直接言及したわけではないが、指揮官も交代選手3人が絡んだ一撃に賛辞を送った。
 
 J1デビュー戦でいきなり結果を残した早川。示した可能性はいくつかある。

 90分の出来事。川崎の車屋紳太郎にボールが渡ると、一気にギアを上げてボールを奪い切る。そこから自分よりも身体が強い車屋の前に入り、強引に進んで振り切った。クロスは味方に繋がらなかったが、球際の強さを発揮した。

 早川は163センチで肉弾戦はそこまで得意ではないほうで、ユースや世代別代表でも同様に際立っていたわけではない。「球際で競り勝って前に行くプレーは、今まであまりなかった。流れのなかでできたので、自分の持ち味にしていきたい」とは早川の言葉。川崎戦でそうした強さを示せたのは成長の証だろう。

 ドリブル時のボールの置き所にも注目だ。ゴールに絡んだ場面でも、90分のプレーでも、倒れずにボールを運んで違いを作っている。小柄で17歳のフィジカルで、なぜ潰されずに突破できているのか。理由は、ドリブルで運ぶ際にファーストタッチで相手の進路を塞ぐようにボールを置くこと。「探り探りやっている」と前置きしたうえで、最初は潰されるシーンがかなりあったというが、日を追うごとにどこにボールを置けばいいかが分かってきたという。そうした適応力や吸収力の高さがあるからこそ、結果を残せているのだろう。

 現時点で90分を戦える体力も、身体の強さもまだ足りていない部分はあるかもしれない。インパクトのあるプレーを見せても、持ち上げ過ぎるのは良くないだろう。しかし、可能性を示し、プロの世界で戦えることを証明したのは事実だ。

 浦和の次の試合は4月29日のACL決勝・第1戦。「人生で1回あるかないかの舞台。選手としてはそこを目ざしたいとずっと思っていたので、もし出場できるのであれば頑張りたい」。サウジアラビアで行なわれる大一番で、出番を得られれば、どんなプレーを見せてくれるか。浦和に現われた新星のプレーから今後も目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
 
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