【クラブW杯】負傷者続出のチームを救った、“紫の稲妻”柏好文

2015年12月11日 小田智史(サッカーダイジェスト)

対戦相手の岩田が「対応の上を行かれた」と脱帽するキレ。

チャンピオンシップから好調を維持する柏。この試合では怪我から復帰して以来、約1か月ぶりのスタメンとなった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 柏がいなかったら、勝利はなかったかもしれない。野津田、柴﨑、清水と故障者が相次ぎ、ボール支配率も33パーセントと苦しいゲームマネジメントを強いられた試合で、右サイドの背番号18は躍動した。

【PHOTOハイライト】広島 2-0 オークランド・シティ
 
 3分、鋭いドリブル突破でマッチアップした岩田卓也のファウルを誘発すると、3分後には再びドリブル突破からゴール前にクロスを供給。先陣を切って攻撃の圧力を強めたことで、9分の皆川のゴールが生まれた。その後も、ボールを持てば果敢に縦に仕掛け、41分には塩谷→柴﨑→柏と"国士舘ライン"でつなぎ、最後は塩谷のヘッドを演出(GK正面)。勢いは後半も止まらず、ドリブル突破で右サイドから再三チャンスを作った。
 
 オークランドシティ戦で目立ったのは、身体のキレの良さだ。「チャンピオンシップからコンディションは非常に良い」うえ、左膝内側側副靭帯損傷から11月に復帰した天皇杯4回戦以来となるスタメンとあって、心身ともに最高の状態。揺さぶりをかけながら守備網を切り裂く様は"紫の稲妻"のようだった。対峙した岩田も、「すごくやりにくかった。次の対応を考えながらプレーしていたけど、その上を行かれてしまった」と称える。
 
 試合終了後、岩田から声をかけられ、サッカーに関して意見を交わしたという。
 
「1対1で結構やられたんだけど、僕の対応どうだった? どんな対応をされたら嫌かな?」(岩田)
 
「僕は縦を切られたら嫌ですね」(柏)
 
 終盤に接触プレーで負傷させてしまったことで生まれたひょんな会話だったが、同じ日本人として世界の舞台で戦う岩田の姿は、「もっと良いプレーを見せたい」と心が奮い立たせる刺激になった。
 
「世界大会ということでリーグ戦と雰囲気が違いました。激しい当たりやバトルも世界ならではだと思います。世界の舞台で戦うのは滅多にない機会なので、今日の出来に満足せず、自分の良さを出し切りたい。もっともっと行けるし、もっともっと仕掛けたいですね」
 
 強行日程での連戦、そして苦しい台所事情も相まって、広島の置かれた状況は決して良くはない。それでも、誰が出ても同じ水準でプレーできるのが今季の広島の強みであり、13日に行なわれる準々決勝のマゼンベ戦に向けて、柏も「怪我した選手のぶんも自分がやりたい」と意気込みを見せる。今、乗りに乗っているサイドアタッカーなら、チームの苦境を救ってくれるはずだ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
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