連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】広島が4年間で3度目の優勝!“地味だけど強い”常勝王者へ

2015年12月06日 熊崎敬

内容に特筆すべきものはなかったが…。

主力を引き抜かれても弱体化せず、4年間で3度目の優勝。しっかりと組織を築き上げてきた広島が、「常勝王者」になろうとしている。 (C) SOCCER DIGEST

 日本一を決める大一番、だが底冷えする寒さを忘れさせるような熱戦にはならなかった。
 
 0-1でも優勝が決まる広島は前半、5バックでゴール前を固めた。だが、そのためG大阪に攻め込まれる場面が多くなり、何度も許したCKから今野に先制点を決められてしまう。
 
 後半になると広島は高い位置からプレッシャーをかけ、徐々に流れを引き寄せる。右サイドから何度かチャンスが生まれ、76分、柏のクロスから浅野が値千金の同点ヘッドを叩き込んだ。先制されたことを除けば、広島は予定通りゲームを遂行したといっていい。
 
 試合があまり面白くならなかったのは、勝たなければならないG大阪が攻め手を欠いたからだ。
 
 広島の固く閉じた中央の守りを破れず、パスは三日月を描くように横へ、横へと回った。これは逆襲を食らわないためでもあるが、厳しいところを迂回する攻めばかりでは観ていて退屈してしまう。
 
 パスが三日月を描くのは、目の前の敵の裏を取る大胆なプレーができないからだ。だがこれはG大阪に限ったことではなく、日本サッカー界全体の課題だろう。
 
 最小単位での攻防である1対1にシビアにならなければ、ゲームは面白くならないし、勝利を手繰り寄せることはできない。
 
 内容に特筆すべきものはなかったが、それでも年間最多勝点の広島が勝ったことはシーズンの締めくくりとして良かったと思う。4年間で3度の優勝、これは快挙といっていい。
 
 浦和に次々と主力を引き抜かれても、広島は弱体化せず、タイトルを獲り続けている。それは確立されたスタイルがあり、その中で育成がしっかりと機能しているからだ。
 
 広島はJリーグの中で、早くから育成を大事にしてきたチーム。その地道な努力がいま、実を結んでいるのだ。
 
 Jリーグは世界的に珍しい、常勝王者が生まれにくいリーグ。
 
 過去、V川崎、横浜、磐田、浦和、G大阪、名古屋などがタイトルを獲ったが、多くは監督の交代や主力の高齢化など短期間で弱体化した。この20年間、安定して上位につけているのは鹿島だけだ。
 
 広島はいま、鹿島に並ぶ常勝王者になろうとしている。
 
 地味だけど強い、または強いけど地味。そんな世間の評価は、土台からしっかりと組織を築き上げてきたチームにとって嬉しい褒め言葉かもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事