痛み分けの“静岡ダービー”で見えた両チームの明と暗。磐田と清水どちらも「勝ち切れなかった」印象も…十分な伸びしろを感じた

2023年03月20日 前島芳雄

久しぶりの“ダービーらしい”雰囲気に

磐田対清水の静岡ダービーは、両者譲らず痛み分けに終わった。(C)J.LEAGUE

[J2第5節]磐田2-2清水/3月18日/エコパスタジアム

 J2では初めて行なわれた磐田と清水の静岡ダービー。その事実は名誉なことではないが、声出し応援があるなかで戦えるのは3年半ぶり。小雨が降るエコパスタジアムの大屋根に両サポーターの大声援が響き渡り、本当に久しぶりに「ダービーらしいな」という気分を味わえるなかでキックオフを迎えた。

 そこから両チームの選手たちが強い闘志を見せ、球際でも激しいデュエルを繰り広げ、2点を取り合うなど、見せ場も多かった。ただ結果のほうは、どちらも「勝ち切れなかった」という印象の痛み分け。試合後に選手たちがスタンドにあいさつに回った際には、両チームともサポーターから厳しいブーイングを浴びせられた。

 試合内容でも、両チームとも収穫と課題の両方が見えた。

 ホーム開催の磐田で強い輝きを放ったのは、まだ高校2年生ながら大舞台に抜擢されたプロ初先発のFW後藤啓介、17歳。開始2分で教科書のようなプルアウェイの動きから裏に抜け出し、GK権田修一と対面しながらも冷静に左足でゴール右に流しこんで価値ある先制点をもたらした。

これで後藤は早くも今季3点目。チームもサポーターも大きな期待を寄せる大器が自信を増したことは、今節で最大の収穫だった。

 ただ、その後は清水に押し込まれる時間が長く続いた。現在の磐田は、前からのプレスよりもコンパクトな守備ブロックを整えるのを優先している。対する清水は、今節では攻撃時にボランチの白崎凌兵が2センターバックの右に下がって3人でボールを動かす形を採用。中盤の底にはホナウドだけが残って、両サイドバックを含む6人が高い位置をとって攻撃に人数をかけた。
 
 そうした噛み合わせによって、清水の最終ラインにはほとんどプレッシャーがかからず、楽にボールを前に運ぶことができた。

 磐田は押し込まれる展開のなかで、4-4の守備ブロックを組んでよく耐えていたが、前後半とも終盤にチアゴ・サンタナに決められて2度のリードを守り切れなかった。

「自分たちが低い位置で守る時間が長くなりすぎると、やっぱりこうなってしまいます。(清水は)最後はパワーのある選手が入ってきて、簡単にボールを放り込まれて、前にあれだけ強い選手が2人いると、事故じゃないですけど、ああいう形でやられる(2失点目)可能性は高くなってしまうので」と、2点目をアシストした鈴木雄斗は課題を指摘する。

 その原因として「せっかく奪ったボールに対しての反応が遅かったと思います。(体力的には)キツいけど、一歩頑張ってサポートの位置をとれるか、出し手がそこを冷静に見られるかという部分が足りなくて、押し返すことができなかったのは自分たちの課題だと思います」と鈴木雄はつけ加えた。

 最終的なボール支配率は、磐田37パーセント、清水63パーセント。前から無理にプレスに行かないのは、現時点ではチームの共通理解として選手たちも割り切っている。それよりも奪ったボールをつないで攻撃の時間を増やせなかった点が、チームの大きな課題として浮き彫りになった。
 

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