【浦和】ビッグチャンスを逃した武藤。責任を感じて口を突いた言葉は…

2015年11月28日 轡田哲朗

「冷静になれていないから外れているわけだし、実力不足。残念です」

がっくりと肩を落とす武藤。笛が鳴った瞬間に頭をよぎったのは、後半終了間際のビッグチャンスを外したことだった。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 自分が決めていれば――。

 武藤は、タイムアップの笛とともに悔恨の思いに支配されていた。11月28日のチャンピオンシップ準決勝のG大阪戦、1-1で迎えた後半アディショナルタイムにヒーローになるチャンスが訪れた。

 右サイドの奥深くでズラタンがボールをキープすると、後方からサポートした平川へバックパス。平川はクロスを上げるような素振りを見せ、さらにサポートした森脇の前へボールを転がした。

 その瞬間、武藤はゴールから少し離れていた位置から、相手DFがボールウォッチャーになった瞬間を見逃さず、フリーになってファーサイドに走り込んだ。そこに届いたのは、まさに「ドンピシャ」のクロス。フリーの武藤が頭で合わせた瞬間、誰もが浦和のゴールを予感した。

 しかし、ボールはGK東口の正面に飛んだ。

「自分のなかでは、良いポイントでセンタリングを受けたと思っているし、素晴らしいボールが来た。ヘディングで叩きこむだけだと思ったけれど、GKに弾かれてしまった。鮮明に思い出せるわけではないが、もしかしたら逆サイドを狙ったほうが良かったのかもしれない。そういう紙一重の部分だと思うし、決めて試合を終わらせられなかったことが残念。冷静なシュートができていないからこそ外れているわけだし、実力不足。残念です……」

 試合後に、あの一瞬のことをこう振り返った。

 そして、後半終了の笛が鳴った。武藤は、あおむけに倒れ込んで顔を覆い、起き上がれなかった。

 延長戦、浦和は後半終了間際に立て続けに2失点を喫した。この結果、年間成績2位で進出したチャンピオンシップは、年間3位のG大阪に準決勝で敗退した。武藤は、松尾主審の笛が鳴り響く埼玉スタジアムに立ち尽くした。

次ページロッカールームでは、「決め切れずにすいません」と頭を下げた。

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