【セルジオ越後】スタメン入れ替えで川崎や神戸が敗戦…ルヴァン杯の価値を軽んじていないか? U-21先発出場義務はアマチュア、部活動の発想だ

2023年03月09日 サッカーダイジェストWeb編集部

ACL出場権はルヴァン杯優勝クラブに与えられるべきだ

ルヴァン杯が開幕。各クラブの“本気度”が気になった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ルヴァンカップが3月8日に開幕した。川崎がJ2で14位の清水に2-3、開幕3連勝でJ1首位の神戸は名古屋に0-2で、ともに敗れた。

 Jリーグのクラブにとって、この大会に価値があるのか疑問だ。8日の出場メンバーを見ると、多くのチームがJ1の試合と比べてベストメンバーではなかったからだ。この試合を重要視していないように感じた。

「平日開催で日程が厳しいから、メンバーを落とした」というのは、違うと思う。今は5人交代できる時代だし、ACLではここまで入れ替えない。大会の価値を軽んじているのではないか、そんな考えも浮かんでくる。

 今後のスケジュールも気になった。次戦のグループステージ第2節は、25日と26日。第2次森保ジャパンの初陣となる3月シリーズ、24日のウルグアイ戦と28日のコロンビア戦の合間に行なわれる。また、6月の6節も "代表ウィーク"での開催だ。

 だから、日本代表選手は出られない。そのなかで、どうやって世間にアピールすればいいのか。「代表選手は絶対に出ません。でも、来てください」と誘われて、ファン・サポーターは納得できるのか。

 また、大会で優勝しても"ご褒美"が無い。天皇杯を制したチームには、ACLへの出場権が与えられる。ルヴァンカップでは、以前は優勝すると南米のクラブと対戦できたが、現在は行なわれていない。
 
 ルール上は難しい部分があるのだろうけど、ルヴァンカップ覇者のほうが、よりACL出場にふさわしいと思う。一発勝負のトーナメントでアマチュアのチームも参加できる天皇杯と違い、日本の最高峰であるJリーグのチームがグループステージを経て、決勝トーナメントを戦うからだ。

 トーナメントは勝負の面白さはあるけど、強化という点ではリーグ戦のほうが適している。ルヴァンカップにはグループステージもあるから、よりふさわしいはずだ。

 さらに、「U-21選手の先発出場義務ルール」に対しても、大いに疑問だ。プロは試合出場を実力でもぎ取るもの。年齢だけで優遇されてゲームに出られても、強化にはならない。若いからという理由でスタメンに入れた選手が、J1でレギュラーになれるのか。

 厳しい言い方をすれば、プロではなくアマチュア、部活動の発想だと思う。中学や高校の1年生大会のような、育成方針ではないか。「オリンピックが23歳以下だから」という意見もあるかもしれないが、五輪とJリーグでは歴史も背景も違うよね。

 長年にわたって、スポンサーが支援してくれている大会だ。今のままでは、サポートに見合う広告価値があるようには思えない。もしも、特別協賛を降りられたら、大会自体が無くなってしまうのか。

 プロだから、スポンサーに対しても実力で応えなければならない。ルヴァンカップには、よりスリルのある、人気が高い大会になってほしい。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、77歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。

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