大量4発完勝、ミラーゲームで証明された神戸の組織力と“個の強さ”。相手との差が際立った酒井の2ゴール

2023年03月05日 白井邦彦

試合前から神戸が有利になると予想されたワケ

神戸は酒井の2ゴールなどでG大阪に4発快勝。開幕3連勝を飾った。(C)J.LEAGUE

[J1第3節] 神戸4-0G大阪/3月4日/ノエビアスタジアム神戸

 G大阪との関西ダービーを制した神戸が、6年ぶりの開幕3連勝で首位に立った。

 独特の緊張感が漂うJ1開幕節は1−0での勝利だったが、第2節は3−1、第3節は4−0と複数得点をマークし、昨季の課題だった得点力不足を克服した印象もある。攻守ともに理想的な戦い、あるいは攻守の垣根のない組織的な戦いができている証拠と言っても過言ではない。特にミラーゲームのG大阪戦は神戸の強さが際立つ形となった。

 開幕3節のフォーメーションを振り返ると、第1節の福岡戦は相手の3−4−2−1に対して神戸は4−1−2−3を敷いた。

 試合前は福岡が4バックでくると思われたが、蓋を開ければ3バック。神戸・吉田孝行監督が選手たちに「とにかく我慢しろ、失点0でいけばウチは絶対に点が入る」と伝え、実際に0−0で迎えた70分にジェアン・パトリッキがゴールを決めてウノゼロ勝利となった。

 第2節は札幌の3−4−2−1に対して神戸は4−4−2を採用した。吉田監督は「予想通り、相手はディフェンスラインの背後と対角のロングボールで仕掛けてきたので、まずはそれを蹴らせないようにハイプレスをかけ、蹴られてもスライドしたりして対応できていた」と試合後にシステムの意図を説明している。シーズン開幕前に「相手を見て自分たちのやり方を変える」と話していた吉田監督の手腕が光った一戦と言えるだろう。

 そして今節はG大阪の4−1−2−3と同じフォーメーション(ミラーゲーム)で試合に入った。その場合、戦前から神戸が有利になると予想された。理由は戦術浸透度の違い。ダニエル・ポヤトス監督の新体制で公式戦3試合目のG大阪に対して、神戸は昨夏から吉田監督体制で動き、そのなかで今節の4−1−2−3にもトライしている。同じシステムなら神戸のほうが一枚上手と考えるのが自然だった。
 
 実際、その通りになった。守備時は大迫勇也に加えて齊藤未月がファーストディフェンダーとして高い位置を取り、前線2枚でボールチェイシングを行なう。それに連動して2列目の武藤嘉紀、山口蛍、大﨑玲央、汰木康也がパスコースを切り、ロングフィードさせたボールをDFが回収する。

 また、高い位置でボールを奪回できれば、ショートカウンターを発動させ、最短距離でゴールに迫る。このシステムをほぼオートマチックに神戸はやり通し、4−0という大量得点でのクリーンシート勝利を達成した。神戸が組織力でG大阪を大きく上回った証拠だろう。

 さらに、ミラーゲームでは選手個々の能力差も明白となった。例えば、2点目のシーン。ペナルティエリア右角付近でこぼれ球を収めた酒井高徳は、右横にいた大﨑へパスを出すモーションを入れた。その時、一瞬だが、マークマンの山見大登の足が止まった。酒井はそれを見逃さず、内側に切り返して左足でシュートを放ち、追加点に成功した。経験値も含め、個の能力差が出た場面だろう。

 同じく4点目も個の差が出た。右サイドで武藤がボールをキープしながら相手を食いつかせ、インナーラップしてきた酒井にタイミングよくパスを供給。一気にエリア内に侵入した酒井は中央へパスを入れるタイミングを図りながらドリブルでさらに前進。相手DFが自分に詰めてこなかったため、パスからシュートに切り替えてGKのニアサイド(左肩越し)を射抜いてゴールネットを揺らした。

 例として酒井の得点シーンを振り返ったが、それ以外でも神戸は山口や汰木、齊藤など、各ポジションで個の優位性を示せた。ミラーゲームにおいて、神戸のストロングポイントである"個の強さ"が際立った一戦だった。

取材・文●白井邦彦(フリーライター)

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