「めちゃくちゃ純粋で、めっちゃ良い奴ら」鄭大世が北朝鮮代表の内情を明かす。44年ぶりのW杯出場、ブラジル戦で感じたのは?

2023年01月16日 サッカーダイジェストWeb編集部

「ルシオが強すぎて。力を吸収される気がして」

北朝鮮代表活動について語った鄭大世氏(左)。南アフリカW杯で戦ったブラジル代表のDFルシオ(右)を称賛した。(C)Getty Images

 昨年限りで現役を引退した元北朝鮮代表FWの鄭大世が1月15日、元日本代表MFの鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルにゲスト出演。2010年の南アフリカ・ワールドカップなど北朝鮮代表での活動について語った。

 まず、自身の国籍は「結構複雑」。日本生まれで国籍は韓国籍で、FIFAのルールで北朝鮮代表の資格を得られたという。2007年の初代表選出の頃は「のし上がってやるぞ」「もっと上のレベルに行ってやるという野心にあふれていた」と振り返る。

 鈴木氏に北朝鮮代表を選んだ理由を問われると、朝鮮学校出身だから自然にそうなったと回答。ただ、記者から「なんで日本代表にならなかったの?どうせ、北朝鮮代表が弱かったから代表になったんでしょ?」と聞かれて腹を立てた経験があったが、今考えると「たしかにそうだな」と思ったと明かす。

 これには、鈴木氏も爆笑。鄭大世氏は、日韓での代表入りはハードルが高く、「"代表"という肩書が欲しかったな」と素直な思いを口にした。

 また、鈴木氏が北朝鮮代表はどのようなチームだったか尋ねると、鄭氏は「めっちゃ優しい」「めちゃくちゃ純粋で、めっちゃ良い奴らだし」と回答。代表チームで国内のリーグ戦に参加して活動期間が長いため、仲間意識が高く、「選手同士の悪口とか絶対言わない。自分たちの中で、仲良くしようという意識が強い」という。

 2007年の東アジア選手権(現E-1選手権)予選で得点王を獲得して、本戦では日本代表と対戦(1-1)してゴールを決めた。「意外といけるな」「日本代表でもこれぐらいできるんだという自信にはなった」「日本のメディアに出るのがすごく嬉しかった。目立ちたがり屋なので」と振り返った。
 
 その後、2010年の南アフリカW杯のアジア予選を突破して、北朝鮮は44年ぶりの本大会出場を果たした。当時のチームは「最初はみんな下手だったのに。(アジア)3次予選ではビルドアップなんて全然できなかったのに。最終予選になるとうまくなっている。すごく選手の成長を感じた」という。

 迎えた南アフリカW杯で、自身は「一番身体がキレていた」。グループステージのブラジル戦(1-2)では、試合前のアップから「夢の中にいるような感覚」で、開始直前にブラジル国歌を聞いて「来た、ワールドカップだ」と感激して涙が止まらなかった。

 試合では、後半アディショナルタイムに入っても「このまま試合終了の笛を鳴らさないでくれとずっと思っていた。それくらい夢見心地な試合だった」と振り返る。

 また、鈴木氏にブラジル代表について問われると、「ルシオが強すぎて。背負っているのに背負っている気がしないというか。自分の(身体に当てる)力を吸収される気がして」「ファンは、緊張している僕をあざ笑うかのように、あえてロングボールに身体を当ててこない。チラッと後ろで見ながら、トラップの瞬間取りに来る」と、両センターバックのレベルの高さを回想した。

 一方、「ボールをちゃんと受けた時は、しっかりシュートまで行けたし。マッチアップした選手も抜いたり突破できた」と手応えも語る。チームとしても、3連敗で敗退したが、「他のグループだったらいけるのでは」と思うほどだったという。

 ファンから愛されたストライカーは、「自分の力不足を感じた大会ではあったけど、いま引退していろんなお仕事をいただいているのは、ワールドカップの経験があったからこそ」と感謝した。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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