セミプロ時代は工場勤務や警察沙汰も。岡崎慎司の同僚ヴァーディーの「知られざる波乱万丈伝」

2015年11月06日 松澤浩三

15歳で幼い頃からファンだったクラブからクビを宣告される。

PKを沈めたこの4節からここまで8試合連続ゴール。今シーズンのヴァーディーは一気にスターダムに伸し上がった。(C)Getty Images

 開幕11試合で11ゴールを挙げて、一躍大きな注目を浴びているのが、レスター・シティのFWジェイミー・ヴァーディーだ。この岡崎慎司の相棒は、いわば遅咲きの苦労人。その「知られざる波乱万丈伝」とは――。
 
 プレミアリーグ初参戦の2014-15シーズンは、34試合に出場して5得点・8アシスト。「9番」を背負ったFWとしてはゴール数に不満が残るものの、持ち前のハードワークとカウンター時の鋭い動き出しで、チームのプレミアリーグ残留に大きく貢献した。
 
 その活躍が認められ、シーズン終了後にはイングランド代表から初めてお呼びがかかった。
 
 アイルランドとの親善試合(6月7日)を控えた会見で、ヴァーディーは「プレミアでここまでやれるとは思わなかった」と本音を漏らした。
 
 それもそのはずだ。ほんの3年前まで、ノンリーグ(アマチュアやセミプロを含む5部以下のリーグの総称)でプレーしていたのだから。
 
 現在28歳のヴァーディーが辿ってきた道は、決して平坦ではなかった。最初の挫折は15歳の時。幼い頃からファンだったシェフィールド・ウェンズデイ(現在2部)のユースチームでプレーしていたが、「身体が小さい」という理由でクビを宣告されてしまう。
 
「大好きなチームに居られなくなって、本当にショックだった。最悪だよ。もっと悔しかったのが、追い出されて1か月くらいしてから、急に身長が伸びはじめたこと。20センチ以上も一気にね」
 
 いまとなっては笑い話だが、10代の少年にはダメージが大きく、8か月もボールを蹴らない時期が続いた。
 
 その後、ヴァーディーは炭素繊維工場で働きはじめ、8年間にわたって従事する。
 
「身体障害者のための補助器具を作る仕事だった。重たい原料を高熱のオーブンの中に運ぶんだ。その作業を1日に何百回も繰り返す。背中にはつねに大きな負荷がかかってね。身体には良くなかったと思うよ」

次ページ工場勤務を続けながらセミプロでプレーを続ける。

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