【藤田俊哉の目】悲願のベスト8まであと1つ。確固たるスタイルと揺るぎない自信を手にした日本ならば、越えられない壁ではない【W杯】

2022年12月05日 藤田俊哉

スペイン戦はハラハラドキドキという言葉がピッタリくる

ゴールラインを割っていたかどうか――神頼みをするタイプではないが、気づいたら両手を握りしめて神様に祈っていた。(C)Getty Images

[カタール・ワールドカップ・グループステージ第3戦]日本 2-1 スペイン/12月1日/ハリファ国際スタジアム

 スペインに勝たなければ、決勝トーナメントに行けない――。そんな運命の大一番で、日本はドイツ戦に続いて、またしてもジャイアントキリングを成し遂げた。

 それにしても、スペイン戦はハラハラドキドキという言葉がピッタリくる、まさに心臓に悪いスリリングな展開だった。

 1度目の場面は、1-1で迎えた51分だ。途中出場の堂安律の右クロスに走り込んだ三笘薫がゴールラインギリギリで折り返したボールが、ゴールラインを割っていたかどうか――。VARによってその判定を待たされていた。時間にすれば2分32秒だったが、それ以上に長い時間、待たされていた気がした。

「インゴールであってくれ」

 私はあまり神頼みをするタイプではないが、気づいたら両手を握りしめて神様に祈っていた。ようやくゴールが認められた瞬間、スタジアムがどよめく。自然と拳を上げてガッツポーズをしていた。
 
 2度目の場面は、1点リードで迎えた終了間際のアディショナルタイム。あの7分間で、頭によぎったのは、29年前の1993年"ドーハの悲劇"だ。当時、私は大学生だった。イラク戦、終了間際の後半アディショナルタイムでショートコーナーから失点し、初のワールドカップ出場を逃した。日本の選手たちがピッチ上に崩れ落ちるのを見て、私も自然と涙したことを思い出した。

 スペイン戦は奇しくも同じカタールの地。あと1失点でもしたら、日本はグループ3位に転落する。しかし、日本はスペインの猛攻を跳ね返し、試合終了のホイッスルが鳴り響く。その瞬間、安堵とともに全身の力が抜けていった。

 その"ドーハの悲劇"の当事者の1人だった森保一監督は、29年前と似たようなシチュエーションとなったスペイン戦で、緊迫したシーンの連続を冷静に読んで完璧な采配を見せた。
 

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