【藤田俊哉の目】ホテルに携帯やパスポートを忘れたりするお茶目な森保監督。真面目で勉強熱心な指揮官の名采配にただただ感服【W杯】

2022年11月26日 藤田俊哉

いまだに信じられない自分がいる

ビッグサプライズの立役者は、間違いなく森保監督だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[カタール・ワールドカップ・グループステージ第1戦]日本 2-1 ドイツ/11月23日/ハリファ・インターナショナル・スタジアム

「本当にドイツに勝ってしまった」
「ああ、日本はここまで強くなったんだな」

 ドイツ戦の逆転勝利によって溢れ出たアドレナリンを抑えながら、そんなことを思っていたのは私だけではないだろう。

 1998年のフランス大会に初出場して以降、日本は速いスピードで成長してきた。多くの選手たちが海外に挑戦してレベルアップし、ハイレベルなサッカーへの理解度も高くなっているとも感じている。

 それでも――。ワールドカップの出場が夢物語だった頃から、ずっとサッカーボールを蹴ってきた自分にとって、まさかドイツに勝つ日が来るなんて想像もできなかった。歴史的な勝利からしばらく経っても、いまだに信じられない自分がいるのだ。

 ドイツ戦の勝利を受けて、海外の知り合いからも「コングラチュレーション(おめでとう)!」「エクセレント(素晴らしい)!」など、たくさんの祝福の言葉をもらった。

 私は2012年に選手を引退したあと、オランダに身を置いてVVVフェンロやリーズ・ユナイテッドなどで活動を続けてきたが、オランダにいてすごく感じるのが、ヨーロッパにおけるドイツサッカーの存在の大きさだ。
 
 前日に同じく、アジア勢のサウジアラビアが優勝候補のアルゼンチンを破り、サプライズを起こした。しかし、個人的には、日本がサッカー大国のドイツを破った衝撃のほうが数段上だと感じている。

 ドイツの勝負強さは、まさにサッカーの歴史が雄弁に語っている。とりわけ、ワールドカップの歴史においては、特に顕著だ。優勝回数はブラジルの5回に続く2位の4回だが、決勝進出回数(8回)、準決勝進出回数(13回)、ベスト8進出回数(17回)とも、すべてドイツが最多を誇っている。

 メキシコ・ワールドカップの得点王に輝いた、元イングランド代表FWリネカーの「サッカーは、最後にいつもドイツが勝つ競技だ」という言葉を思い出したが、強豪国の一つであるオランダ人さえ、「ドイツの勝負強さには、もはや敵わない……」と口を揃えている。かつてアジアにおいて、日本が韓国に対してそう思っていたように、オランダにとってドイツはトラウマとも言える。

 オランダをはじめ強豪国を苦しめてきたそのドイツを今回、日本は破った。先制される苦しい展開から見事に逆転勝利を収め、ヨーロッパのみならず、世界のサッカー界に衝撃を与えたのである。

【W杯PHOTO】30度を超える炎天下の中…コスタリカ戦に向け元気にトレーニングを行う日本代表!
 

次ページ先手、先手の積極的な采配

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事