神戸が破竹の5連勝でJ1残留に王手。躍進のカギを握るのは、緻密にデザインされたセットプレー

2022年10月13日 白井邦彦

広島戦の先制点は「練習していた形」

湘南との残留争い直接対決で決勝点を挙げた大迫。神戸躍進の裏には緻密なセットプレーがあった。写真:滝川敏之

[J1第27節] 神戸1-0湘南/10月12日/ノエビアスタジアム神戸

 12位の神戸と13位の湘南による一戦は、神戸が大迫勇也のゴールで競り勝った。この白星で2008年以来のリーグ5連勝を達成した神戸は、プレーオフ出場圏の16位以上が確定し、J1残留をほぼ手中に収めている。

 しかも、川崎、横浜と対戦する残り2節の結果次第では、最高8位まで浮上する可能性もある。まさに破竹の勢いだ。

 その躍進に一役買ったのが、デザインされたセットプレーだった。

 振り返ると、直近の32節・広島戦(4-0)でも、先制点はトリッキーなFKから生まれている。20分に左サイドでFKを得ると、キッカーの汰木康也が中央やや後方に構えた山口蛍へ横パスを供給。これを受けた山口が、前方に浮き球のパスを入れ、ペナルティエリア左に走り込んだ大迫が中央に折り返し、最後は菊池流帆が泥臭くゴールに押し込んだ。
【動画】セットプレーからトリッキーなゴールが生まれた広島戦の先制点をチェック!

 このシーンについて、プレースキッカーの汰木は試合後に「練習していた形だった」と明かしていた。
 そして、湘南戦のゴールも左CKのセットプレーから生まれている。キッカーは汰木。軽く左手を挙げ、ゴール前の選手に合図を送ってから放たれたインスイングの球は、ゆるやかなカーブを描きながらニアサイドへ。それを大迫が、右の太ももで合わせて先制点を奪った。

 この場面、大迫が湘南の舘幸希のマークを外し、さらにウェリントンの前にスッと入る一連の動きに注目が集まった。SNSなどでは、「半端ないゴール」といったの賞賛の声も上がった。

 だが、これは大迫の個の力だけで生まれたゴールではない。汰木のコメントから察すると、しっかりとデザインされたものだったのがうかがえる。

「(CKの狙いは湘南の)ウェリントン選手が届かないところに巻いて…というのは練習していました。良いボールだったと思います」

 どこまでデザインされたものかは不明だが、この場面では武藤嘉紀と小林友希がニアサイドでモーションを入れ、相手DF3人の目を引きつけている。そして、大迫をマークしていた舘とウェリントンもつられてボールウォッチャーに。その隙を突いて大迫がウェリントンの前に入り込み、ゴールに繋がった。

 結果論だが、武藤と小林友がニアに動いたことで、大迫がウェリントンの前に入り込むスペースと隙が生まれたのだ。
 

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