【ハノーファー戦レビュー】常に「相手の嫌がる選手」「相手に脅威を与える選手」だったマインツ・武藤

2015年08月30日 サッカーダイジェストWeb編集部

好守で抜群の働きと存在感を示し、地元紙からは最高採点!!

 ブンデスリーガ3戦目にして初ゴール、しかも2点だ。3本の枠を捉えたシュート(うち2本がゴール)と判断の良いミドルシュートが1本。ブンデスリーガの公式サイトによると、31回の競り合いを演じ、28本のスプリントを見せたという。いずれもチーム最多だ。
 
 これはつまり、武藤嘉紀が得点という目に見える結果を残しただけでなく、攻撃ではFWとして常にハノーファーを脅かしたということ、そして前線での圧倒的な運動量と積極性で守備でも大貢献したことを意味する。
 
 途中交代でデビューを果たすも、チーム自体が低調だったこともあってほとんど見せ場のなかったインゴルシュタットとの開幕戦、前線での豊富な運動量と献身的な動きが評価される一方で決定機を2度逸したことが大きな悔いとなって残った2節・ボルシアMG戦を経て、3節・ハノーファー戦での武藤は目に見える進歩を見せた。
 
 何より、前節での大きな反省点だった決定力不足を、2ゴールという最高のかたちで改善した。1点目はハイロが左サイドから中央に向かってドリブルを始めると、すぐにDFラインの裏側に走り込み、スルーパスを引き出した。
 
 このかたちは先制ゴールの2分後にも見られたが(これはGKがブロック)、裏に走り出す動きの速さと、その後の身体をひねりながらの鋭いシュートからは、身体のキレとコンディションの良さが感じられた。
 
 29分のゴールは、CKからベルが折り返したボールに素早く反応し、フリーで頭で詰めたものだったが、このCKを生み出したのは、ボールを確実に収めてコントロールし、相手DFとの1対1から抜け出してクレメンスに決定機を演出した武藤のプレーだった。
 
 恐れを全く知らないプレー――。武藤はそれを、攻守両面で見せた。デビュー戦から変わらぬ抜群の運動量で屈強な相手DFにプレッシャーをかけ続け、攻撃では的確な判断で相手に勝負を挑んでいた。
 
 後半開始間もなくに決まった3点目は、武藤のマークで相手DFマルセロが苦し紛れのパスを中央に出したところを、マッリがかっさらい、GKをもかわしてゴールに流し込んだものである。
 
 この場面に限らず、武藤は守備時に相手DFを徹底的に追い回した。ひと回りもふた回りも大きな相手にも動じずにフィジカルコンタクトを仕掛け、競り勝ってもいた。対峙することの多かったマルセロも、明らかにこれを嫌がっていた。
 
 試合から消えることなく、常に相手の嫌がる選手であり続けることは、サッカーでは最も重要でありながらも、なかなか出来ることではないが、武藤は拍手喝采を浴びてピッチを後にする87分まで、これを維持した。
 
 そして攻撃では、相手に脅威を与え続けた。トップとして前線で幅広く縦横無尽に動き回った武藤は、相手に密着マークを許さず、時にトップ下のようなプレーでドリブルやシュートで決定的な仕事を果たし、時に相手の不意を突くプレーを選択し、時にパスで味方を的確に活かしてみせた。
 
 細かい部分で反省点はあるが、加入したばかりの選手にこれ以上を望むのは酷であり、非現実的だろう。それは、ドイツの有力紙『ビルト』が最高採点である「1」をつけたことからも、明らかである。
 
 試合を重ねるたびに着実に進化を遂げ、3戦目で2ゴールという結果を残した武藤。これで完全に信頼を勝ち得たと決めつけるのは時期尚早かもしれないが、組織に順応し、そのなかで個の力を示したことは、誰の目にも好印象に映ったことは間違いない。
 
 この後、ブンデスリーガは代表ウィークのために小休止となり、武藤は日本代表に合流するが、ひと皮むけた彼の姿を直に見るのが、今から楽しみである。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事