【セルジオ越後】せっかくのブラジル戦、もったいないことをしたね。“負けないためのサッカー”では世界じゃ勝てないよ

2022年06月06日 サッカーダイジェストWeb編集部

際立っていたのはGKの権田。それがすべてだ

ブラジルを相手に、日本はよく守った。でも、もったいない試合だった。もっと点を取りに行く姿勢を見せてほしかったよ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 キリンチャレンジカップでブラジルと対戦した日本は、ネイマールにPKを決められて、0-1で敗れた。

 最少失点の敗戦。日本はよく守ったね。開始早々にポストに救われたり、必死に身体を張ってシュートをブロックしたり、劣勢の展開でも粘り強く戦っていたと思う。

 でも、もったいない試合だった。世界屈指のタレント集団を相手に、守備で頑張っていたけど、もっと点を取りに行く試合をやってほしかった。

 パス、パス、パス……。キープしようとして、なるべく0-0の状態を長くしようとしているように見えた。それは、勝ちに行くサッカーじゃない。

 今回のブラジル戦は、引き分けたところで勝点がもらえるわけじゃない。誤解を恐れずに言えば、テストマッチだから別に負けてもいいし、今の森保ジャパンに足りないところをもっと試してほしかった。

 日本はワールドカップで、優勝候補のドイツ、スペインと戦う。ブラジルも同じく、優勝を狙える強豪国だ。そういうレベルの相手に、テストマッチで"負けないためのサッカー"をやってどうするの? 

 ワールドカップでは、いくら相手がドイツやスペインでも、日本は勝たなければいけないんだ。そのシミュレーションにブラジルは打ってつけの相手だったのに……。

 韓国はブラジルに1-5で大敗した。でも1点を取った。取りに行った。その違いはあると思う。日本の試合で、そういう気概を見せた選手がいたのか。誰が目立っていたのか。際立っていたのは、GKの権田だ。それがすべてを物語っているよ。

 負けてもいいから、1点でも2点でも取れたら、選手たちの自信になったはず。それが次につながるはずだし、ワールドカップでベスト8以上を目ざすという森保ジャパンへの期待感も高まるんだ。
 
 ブラジル相手に大差で負けても、誰も文句は言わない。それだけ力の違いがあるんだから。結果的に1点しか取れなかったブラジルだけど、ゴールに向かう姿勢は最初から存分に示していた。実力がどうこうではない。スタンスの問題だ。

 点を取りに行こうとする選手がいなければ、ワールドカップでも苦戦するんじゃないかと。またひとつ心配になったよ。ドイツ、スペインに"2分け"をイメージしているのか。それではベスト8にも届かないね。

 攻撃的なチャレンジができなかった。そこを伸ばしていかないといけないのに。後半に伊東がボレーで狙ったけど、はっきり言って、あれはシュートじゃない。枠にも飛んでいないんだから。

 当たり前のことだけど、点を取らないと勝てないんだ。その部分がブラジル戦では見えてこなかった。大きな宿題が残ったね。

 次はキリンカップサッカーで、ガーナ、チリまたはチュニジアと対戦する。日本には"勝ちに行く"サッカーを期待したいよ。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、76歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。

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