リバプールさえも屈したマドリーの「得体のしれない強さ」。もはやCL決勝では「勝って当たり前」という無敵感すら…

2022年06月04日 エル・パイス紙

相手が絶望するほど抵抗し、冷静に勝機を見出す

最多記録を更新する14度目の戴冠を果たしたマドリー。(C)Getty Images

 チャンピオンズ・リーグ(CL)において、レアル・マドリーほど信頼性の高いチームはない。対戦相手や試合会場を問わず、自分たちがチャンピオンであるという確たる信念を持ってプレーする。劇的な逆転劇の舞台、サンティアゴ・ベルナベウで不屈の精神を発揮し、決勝戦における勝負強さに至っては、もはや勝って当たり前という無敵感すら漂わせる。

 今シーズンはパリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティの3チームが立て続けに逆転劇の引き立て役となり、決勝でもリバプールがヴィニシウス・ジュニオールのゴールで先制を許すと、好守を連発したティボー・クルトワと堅固な守備の前に最後までゴールを割れずに敗れた。

 リバプールは戦術的によく鍛えられたチームだ。チーム全体が圧縮するようにスペースを埋め、ピッチを横に広く使いながら、スピードに乗って相手ゴールに迫る。一人ひとりがイメージをシンクロさせ、ピッチを所狭しと動き回り、攻守の舵取り役としてフィルジル・ファイ・ダイクが後方で構える。

 前半、マドリーはこのリバプールのプレー強度の前に、プレスが連動せずにDFラインがズルズルと下がることを余儀なくされた。マドリーにとっては最も厳しい時間帯だったが、ゴール前にクルトワが巨大な壁として立ちはだかり凌ぎ切った。

 相手が絶望するほど抵抗し、冷静に勝機を見出す。そう、マドリーの試合展開だ。今シーズンのCLにおける必勝シナリオともいえる。

 そして43分だった。アリソン・ベッカーとイブライマ・コナテの混乱に乗じてベンゼマが左足でネットを揺らした。結果的にVARチェックを経て不可解なオフサイド判定で取り消されたが、このプレーがそれまでの悪い流れを変えるきっかけになった。

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 ハーフタイムを挟んでも、マドリーに傾いた流れは変わらなかった。前で圧力をかけられるようになり、ボールを保持する時間帯も増えた。相対的にリバプールはプレッシングの威力が低下。試合は前半よりもオープンな展開となり、マドリーはその潮目の変化を逃さなかった。59分、起点となったのは、ダニエル・カルバハルの攻め上がりだった。右サイドを抜け出したフェデリコ・バルベルデのグラウンダーのクロスをヴィニシウスが押し込んだ。

 前述のベンゼマのゴールがオフサイドで取り消されたシーンがこの試合の1つ目のターニングポイントだとすると、2つ目のそれがこのヴィニシウスの先制ゴールだった。その後、マドリーは逃げ切り体勢に入り、激しい守備と熱い闘志を前面に押し出してリバプールの攻撃陣に立ち向かった。

 リバプールは、モハメド・サラーの個人技とトレント・アレクサンダー=アーノルドのクロスを主武器に猛ラッシュをかけた。しかし最後までゴールは遠かった。浮き彫りになったのがストライカータイプのCF不在というチーム構成だ。期待のルイス・ディアスは存在感が希薄なまま後半早々に退き、終盤に投入されたロベルト・フィルミーノもノーインパクトに終わった。

 同点に追いついたとしても、最後に屈する。リバプールの選手たちはそんなマドリーの有形無形のパワーを否応なく意識してプレーしていたようにも見える。つまるところリバプールもこのマドリーの得体のしれない強さの正体を解き明かすことができなかったわけだ。

 しかしアンチェロッティ監督や選手たちからすれば、相手が変に意識しているだけで、そこに種も仕掛けもないはずだ。シーズンを通してチームを支えていたのは信じる力だった。マドリーだけがCLを制することを知っていたのだ。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙記者)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

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