“挑み続けた”ことで手にした勝点1。チャレンジャーの姿勢は崩さず。アビスパらしく戦い、スタンドからは大きな拍手

2022年05月29日 中倉一志

臆せず、どんな相手にも、どんな状況でも、最大出力を発揮

ホームでの浦和戦は主導権を握られ続けたが、0-0のドロー決着。長谷部監督は「意地のようなものも見せられた」と振り返った。(C)J.LEAGUE

[J1第16節]福岡 0-0 浦和/5月28日/ベスト電器スタジアム

 難しい試合だった。

 5月28日のJ1第16節で、アビスパ福岡はホームで浦和レッズと対戦。蓄積する疲労の影響からか、持ち味である出足の鋭さを発揮できずに、前線のプレスに始まる連動した守備は機能せず。90分間にわたって浦和に主導権を握られ続けた。

 少しオープンな展開になった終了間際こそ得点の匂いを漂わせたが、トータルで見れば"浦和の試合"だった。「内容は非常に良くなかった」と振り返ったのは長谷部茂利監督。結果は0-0。試合終了を告げるホイッスルが鳴った瞬間、スタジアムには静寂が訪れた。

 だが同時に、長谷部監督はよく戦ったと口にする。

「よくやってくれたと思う。相手はACLを戦っているチーム。そのチームに対して自分たちがどこまでできるかという挑戦だった。順位こそ上にいるが、現実は相手のほうが強いと思うが、今日に関してはホームだし、そうはいかないぞという意地のようなものも見せられた。十分に戦ってくれた」

 そして一瞬の静寂の後、ファン、サポーターに挨拶する選手たちにスタンドから大きな拍手が送られた。勝ちたかった。悔しかった。でもアビスパらしく戦った。その拍手はそう語っているかのようだった。

 昨シーズン、5年ごとに昇降格を繰り返す「5年周期」に終止符を打ち、J1ではクラブ史上最高位となる8位という成績を収めた以外にも、いくつものクラブの記録を塗り替えたアビスパだが、クラブをはじめ、監督、スタッフ、そして選手たちもチャレンジャーという姿勢を崩さない。J1でやっていける自信はある。けれども自分たちの立ち位置を勘違いすることはない。それは長谷部監督の次の言葉にも表われている。

「自分たちはチャンピオンチームでもなんでもない。まだ2年目で必死になってやっているチーム。その立ち位置を確認して、みんなで一丸となって戦っていきたい」

 もちろん勝負の世界にいる以上、常に勝利を目ざすのは当たり前。だが、うまくいかないこともある。むしろ、力関係からすれば、うまくいかないことのほうが多い。けれど臆することなく、どんな相手にも、どんな状況でも、その時にできる最大出力を発揮して何とかして勝点を積み重ねる。それがアビスパの姿勢。それは押し込まれ続けた浦和戦でも発揮されていた。

 この日、チームを支えたのは最終ラインだった。中央で強さを発揮していたのは奈良竜樹とドウグラス・グローリ。SBの志知孝明と前嶋洋太も粘り強い守備で浦和の突破を防いだ。
 
 できないことを否定するのではなく、それを受け入れたうえで何をすべきかを考え、そして実行する。すべては挑戦。長谷部監督も「挑み続ける」と常に口にする。勝てなかった悔しさは残るが、うまくいかないなかでも挑み続けたことで手に入れた勝点1だった。

 16試合を終えて4勝7分5敗、勝点19の11位という成績は、思い描いていたものよりは低かったはずだ。だが誰も下を向いてはいない。山岸祐也は次のように話す。

「今年もチャレンジャーという気持ちは変わらない。去年はいろんな記録を塗り替えたことで、ファン、サポーターのみなさんはアビスパはもっとできると思ってくれていると思うし、それを自分たちがピッチで結果で表わしていかなければいけない。自分たちも、もっとできると声を掛け合っているし、そう思っている。また積み上げたアビスパというものを後半戦に見せたい」

取材・文●中倉一志(フリーライター)

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