「次の試合がラストかもしれない」大宮・三門雄大の揺るぎない原動力「ピッチに立つのは当たり前じゃない」

2022年04月24日 佐藤亮太

「何かできるはずって自問自答が大事なんです」

今季、大宮のスローガンは「ひたむき」。そのひたむきさが三門を支えている。写真:徳原隆元

 4月16日に行なわれたJ2第10節、ホームでジェフユナイテッド千葉に2-1で勝ち、今季初白星を手にした大宮アルディージャ。「ただ1勝しただけ」と気を引き締める在籍5年目の主将・三門雄大(35)は、この約8か月、様々な思いを抱えていた。

 J2残留が危ぶまれていた昨年8月下旬。周囲の希望的観測のなか、三門は違った。

「より厳しいプレーを」
「監督の言うように人生かけてクロス上げろってことですよ」
「勝つためのモノがピッチに詰まっていないと」

 危機感でいっぱいだった。

 また複雑な思いもあった。「次の試合が引退試合じゃないかってホントに思います。それがモチベーションになっています。これがラストかもしれない。だから最後まで走れる」という切迫感の一方、「この気持ちが若手にうまく伝わらない。これは仕方がないけど……そのくらいの思いでやらないと」という温度差を感じていた。

 結果、大宮はJ2残留争いを強いられた。巻き返しを期して迎えた今シーズンだが、開幕当初、三門はピッチにいなかった。

 昨季最終節、ザスパクサツ群馬戦で左ハムストリングス肉離れ。全治8週間の診断を受けた。幸い、オフ中、治療に専念したものの、思いのほか、時間がかかった。

「良くならないなって。いつ復帰できるか、年齢的にも怖さがありました。復帰したとき若手と僕を比べたら、普通の監督ならば若手を起用する。だから僕はピッチにいる価値を示したい」

 自身の存在意義を示すべく、三門は5節・徳島ヴォルティス戦で復帰。0-2で迎えた78分、ピッチに立てたが何もできなかった。続く6節・ファジアーノ岡山戦で今季初先発。GK2人の負傷交代という緊急事態にチームは気迫の守備を見せるも最後に失点。1-1で引き分けた。その後、先発フル出場を続けるもチームは3連敗。
 
 勝たせたいのに勝たせられない。三門のもどかしさは募るばかりだ。

「対戦相手から『大宮、どうしたの?』って言われました。でも慰めに過ぎないし鵜呑みにしちゃいけない。だって2年連続、この順位なんですから。でも跳ね返さないと。まずは勝って改善点を見つけていく。そして『これで良いのか』ってピッチで毎日、考える。自分の力だけでは変えられないけど、何かできるはずって自問自答が大事なんです」

 さらに昨季限りで引退した河本裕之、長期離脱中の矢島輝一の名を挙げ、こう語った。

「ピッチに立つのは当たり前じゃないことをもう一度、思うこと。そうすれば、出ない一歩が出たり、プレーが違ってくるはず。この試合が最後かもしれない。そう思うのは若手には難しい。でもその試合が自分の運命を変える試合になるかもしれない。だから同じ思いであることを伝えたい」

 最後の試合が、運命が変わる試合になるかもしれない。だからチームのため、サポーターのため、出られない選手の分も走って、戦って、勝つ。その意地が千葉戦で感じられた。

「山形戦からの5連戦、ぶっ倒れるくらい走れたら本物。このチームは強くなれる」

 今季、大宮のスローガンは「ひたむき」。そのひたむきさが三門雄大を支えている。

取材・文●佐藤亮太(フリーライター)

【PHOTO】上位進出を目指すチームを大宮、千葉サポーターがスタンドから後押し
 
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