【鳥栖】代表初選出の藤田は、低迷するチームを救えるか

2015年07月30日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

敗れた鹿島戦でも、“らしさ”は発揮していた。

攻守でバランスの良く能力を備え、指揮官からも絶大な信頼を得る藤田。自身初となる日本代表で揉まれ、さらなる成長につなげたい。(C)J.LEAGUE PHOTOS

「日本のために戦う機会を与えていただいたことを、光栄に思います」
 
 負傷の柏木に代わり、東アジアカップに臨む日本代表に追加招集された藤田は、そう喜びを表現した。勝った試合でも決して浮かれることなく、負けた試合では猛省を欠かさない。真摯なキャプテンらしい言葉に感じる。
 
 10年に福岡大から鳥栖へ加入し、即レギュラーに定着したボランチは、非常にバランスの良い選手だ。長短のパスで組み立てを担い、隙あらば前線へ顔を出してミドルを放つ。球際の激しさ、ボールへ寄せる感覚も秀逸で、攻守で大きな欠点が見当たらない。戦術理解度も高く、12年から4年連続でキャプテンを任されるなど指揮官からの評価は絶大だ。
 
 敗れた第2ステージ5節の鹿島戦でも、そんな"らしさ"は発揮していた。7月11日の第2ステージ開幕から、真夏の19日間で6試合目。しかもその間にはアウェーの2連戦が含まれる"殺人的"なスケジュールのなか、相当な疲れが溜まっていたはずだ。藤田の代名詞とも言えるロングスローを投げる回数が減っていたことからも、疲労の蓄積は明らかだった。
 
 それでも、代えの利かないキャプテンは「しんどいのは相手も一緒」と一切の言い訳をせず、頭と身体をフル回転させて勝利のために力を尽くした。
 
 前半は相手がリスクを冒さずボールを後ろで回すと見るや、「自分たちも、そこまで前から(守備に)行く必要がないと思った」(藤田)とバランスを最優先。自身は中盤の危険な位置を埋め、セカンドボールの収拾に精を出した。
 
 攻撃面でも存在感を見せている。鳥栖はこの日、合計で3本しかシュートを打てなかったが、そのうちの2本は藤田によるもの。鎌田の縦パスから早坂が落としたボールをダイレクトで打った68分のシーンは、この日の鳥栖のハイライトのひとつだった。
 
 試合後には、「後半、少し良い時間帯があったなかで、シュートで終われないシーンが多かったのが課題。ただ、トヨ(豊田)さんがいないなかでも、攻撃のバリエーションは少しずつできていると思う。だからこそ、最後はシュートで終わることにこだわりたい」と前を向いた。
 
 この試合で3ゴールに絡んだ鹿島の柴崎と比べれば、華やかさには欠けるだろう。ただ、チームのために自分の役割を全うする献身性や精神力では負けていない。
 
自身初の代表選出にあたり、チームの公式リリースを通して発した藤田の言葉は、こう締めくくられている。
 
「なにか少しでもサガン鳥栖に還元できるように頑張ってきます」
 
 第2ステージ開幕以降は怪我人も重なり、思うように勝点を伸ばせていない鳥栖にとって、キャプテン藤田の成長は浮上へのきっかけになるはず。日本代表で揉まれ、ひと回り大きくなって戻って来る"背番号14"に期待したい。
 
取材・文●増山直樹(サッカーダイジェスト編集部)
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