早く繋げと要求した守田を飛び越えるロングキック。サウジ戦で見せた森保ジャパンの明らかな変化とは?

2022年02月02日 徳原隆元

ファインダー越しの守田が右手で小さく合図

インサイドハーフで先発した守田は、攻守の繋ぎ役として奮闘した。写真:徳原隆元

 ワールドカップ本大会出場をかけたアジア最終予選の大一番となったサウジアラビア戦。日本は南野拓実の先制弾と伊東純也が強烈なミドルシュートを決め試合をリード。そして迎えた残り15分ほどのときだった。

 カメラのファインダーに守田英正を捉える。攻守の繋ぎ役として奮闘していた守田は後方でボールをキープする味方選手に対して、右手で小さく合図しボールを早く繋ぐように要求した。相手の守備体型が整う前に攻撃を仕掛けたいという思いからの合図だ。

 だが、後方でボールを持っていた選手の意識は、中盤で速攻を試みようとしていた守田の思いをも越える。ロングキックを放ち一気に前線へとボールを送ったのだった。

 この一連の流れは直接ゴールやチャンスを生み出したわけではない。だが、難敵サウジアラビアを相手に付け入る隙を見せず勝利した、この試合における日本を象徴するプレーだったと言える。

 最終予選でグループ首位を走るサウジアラビアに対して日本が完勝できた要因はなんだったのか。ピッチレベルで見る日本にはこれまでの戦い方と比較して明らかな変化が表われていた。
 
 例えば2次予選での日本は相手の守備網を完全に崩そうとする攻撃が目に付いた。高い技術を持って、まさに相手ゴールをこじ開けていくといった感じだ。

 しかし、サッカーは手数が増えればミスの確率も上がる。時間をかければ相手のプレッシャーを受けることにもなる。完全に相手の守備網を崩さなくてもゴールネットを揺らせば1点に変わりはないが、2次予選の日本はよりテクニカルなサッカーで攻撃し、数多くの仕掛けによってゴールが決まればいいという楽観的な雰囲気があったように思う。格下相手ならこのスタイルでも結果を出せた。

 だが、最終予選となり、相手がワールドカップ本大会出場を現実的に捉える強豪国となると、それまでのゴール前で複雑にボールを繋ぎ、敵の守備陣を翻弄するサッカーは必ずしも通用しなくなっていった。スピード感を欠く手数をかけた攻撃は、相手の守備陣形を整えさえ、得点力不足を招いた一因となったことは否めない。
 

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