「神奈川代表には負けられない」高川学園の江本監督が19年の時を経て果たした“リベンジ”【選手権・準々決勝】

2022年01月04日 松尾祐希

「やってやろうという気持ちになった」(山崎)

選手時代を含め、神奈川県勢には苦い思いをしてきた江本監督。今大会の準々決勝で桐光学園を下し、リベンジを果たした。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 [高校選手権準々決勝]高川学園1-0桐光学園/1月4日(火)/等々力陸上競技場

 前身の多々良学園時代を含めると、3度目の4強入りだ。

 高川学園が選手権で最後にベスト4に入ったのは、今から14年前。そこからしばらく全国の舞台で苦戦を強いられる時期があったが、今大会は注目を集めているセットプレー"トルメンタ"を活用しながら、粘り強く戦って勝ち上がってきた。

 1-0で競り勝った準々決勝の桐光学園戦でも、決勝点はCKから。円陣を組んだ選手たちがゴール前に入っていく"トルメンタ"を応用し、途中出場のMF西澤和哉(3年)が決勝点を奪った。試合終了のホイッスルが鳴ると、選手たちは感情を爆発させる。負傷中の奥野奨太(3年)に代わってキャプテンマークを巻くMF北健志郎(3年)はピッチに突っ伏し、涙を流しながら勝利の喜びを噛み締めていたほどだ。

 歓喜に湧く選手たち。その姿を嬉しそうに見守っていた江本孝監督にとっても、特別な勝利だった。

 江本監督は多々良学園時代に中原貴之(元仙台ほか)らとインターハイに出場し、キャプテンとして4強入りを経験。しかし、2002年度の最後の選手権は2回戦で神奈川県代表の桐蔭学園に2-3で敗れ、苦い思い出を残したまま高校サッカーに別れを告げていた。

 福岡大を卒業後に指導者となり、2013年12月に母校の監督に就任したが、以降も神奈川県勢には苦渋をなめる。監督就任初年度となった2014年度の選手権では、2回戦で日大藤沢と対戦。今回の選手権でベンチ入りしている岡田浩平コーチもゴールを奪ったが、2-3で敗れた。またしても神奈川県勢の軍門に降る――。
 
 そうした歴史は選手たちも把握しており、試合前にも改めて監督から過去の歴史について話があった。それを聞いた選手たちも期するモノがあったと話す。

「やってやろうという気持ちになった」(山崎陽大/3年)。

 19年の時を経て、ようやく果たされた神奈川県勢へのリベンジ。江本監督は言う。

「私自身、選手権の2回戦で桐蔭学園と戦って2-3で敗れています。私が高校の監督に就任して初めて挑んだ選手権では、日大藤沢に2-3で敗れました。さらには一昨年、沖縄でのインターハイで西京高校が準々決勝で桐光学園に0-1で敗れており、神奈川代表には負けられないという思いはありました」

 江本監督にとって、今回の勝利は一生忘れられないものとなったはず。試合後には選手たちの奮戦ぶりを称え、「試合前に『借りを返してほしい』と伝え、選手たちが結果を出してくれたので感謝したい」と笑顔を見せた。

 ただ、挑戦はこれで終わりではない。次は初となる決勝進出を目指す戦いが待っている。相手は優勝候補筆頭の青森山田。今夏のインターハイ覇者は間違いなく強敵だが、次の世代に向けて新たな道を作るためにも負けられない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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