【広島】チームを団結させた守護神・林のスーパープレー

2015年07月20日 小田智史(サッカーダイジェスト)

PKストップに始まり、10度の決定機を最少失点で切り抜ける。

林は浦和との大一番で今季一番のパフォーマンを披露。23本のシュートを浴びながら最少失点で切り抜け、チームの逆転勝利を呼んだ。 (C)SOCCER DIGEST

「最悪の前半だった」。エース佐藤の言葉だ。浦和との大一番、もちろん慎重に試合に入るのは大事だが、本来ならボールをつないでいくところで大きく蹴り込んだり、「自分たちのサッカーではない」(佐藤)展開が続いた。
 
 その嫌な流れに呑み込まれるように24分、浦和の高木を佐々木が後ろから倒し、PKを献上してしまう。絶体絶命のピンチを救ったのが、守護神の林だった。冷静にキッカーである高木俊の動きを見極めて反応し、ドンピシャのスーパーセーブでシュートをストップした。
 
 関根のシュートが味方に当たって先制こそ許したものの、林は39分にその関根との1対1を身体を張って止めると、前半終了間際にもループシュートをジャンプ一番で弾き出し、最少失点で前半を折り返した。
 
 森保監督によれば、ハーフタイムのロッカールームでは、「(林)卓人が頑張って守ってくれているから0-1で折り返すことができた。それに応えて行こうぜ!」と選手たちは声を掛け合っていたという。「チーム一丸となって戦おうとする姿勢」(森保監督)が、後半流れを変える呼び水になった。
 
 林の好セーブは続く。51分、CKのこぼれ球に反応した武藤のシュートを足でセーブ。59分には柏木のコースを突いたFKに右手を目一杯伸ばしてゴールを割らせない。味方もそれに応え、浅野が同点ゴール、主将の青山が決勝弾で浦和に引導を渡した。
 
 浴びたシュートは23本、決定機は実に10回。「今日の勝因はまずなにかと言えば、卓人のセーブだと思う」と森保監督も逆転勝利の立役者となった守護神に賛辞を惜しまなかった。
 
 ただ、林自身は「戦術や技術云々の前に、自分たちは気持ちの部分で相手を勝る必要がある。そこで戦えば勝てると分かったのは一番の成果。僕が入る前から(浦和に)勝ってないというのは知っていましたし、みんながどうにかして勝ちたいと思っているなかでひとつ勝てたので、自信にできる部分はある」と話しながらも、厳しい表情でこう言葉を続けた。
 
「内容的に見たら、前半は特に浦和に押し込まれていた。夏の試合で終盤は(スタミナ的にも)キツくて、ボールタッチもおぼつかない状況だったので、手放しで喜べない部分もある。この勝利でなにかタイトルを得られていれば、達成感もあったかもしれないですけど、まだ僕らは道半ばですから」
 
 今季開幕から無敗の浦和に土を付けた喜びに浸ることなく、年間王者というチームが掲げるゴールに向かって気を引き締める。守護神・林の存在がいつも以上に頼もしく見えた。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
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