【仙台】4失点での敗戦をポジティブに捉えられる理由

2015年07月13日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

悪癖の修正は進んでいる。あとは“試合巧者”の称号を手に入れたいが。

広島を相手に試合運びで差を見せつけられたが、落胆する内容でもない。チームは着実に良いほうへ向かっており、次節以降の戦いぶりに期待がかかる。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 第2ステージは、ホームの試合はすべて勝利する――。そんな意気込みは、敵地で敗れている広島へのリベンジを期した開幕戦で脆くも崩れ去った。しかも4失点を喫しての敗戦だ。結果だけを見れば、"失望"の二文字を突き付けられても仕方ない。
 
 だが現地で目にした内容は、本拠地で勝点を手に入れられなかった事実に反して今後への希望を抱けるものだった。「悲観すべきではない」という渡邉監督の言葉を素直に受け取れる。前線からのプレスがハマり、3点差とされても盛り返すエネルギーがあり、見どころは少なくない90分間だった。
 
 もちろん、ポジティブな材料ばかりが揃っているわけではない。堅守をベースとしたなかで失った4点は重く受け止めるべきで、試合巧者の広島に終始ペースを握られてしまったのは大きな反省点だろう。
 
「追い上げたとは言っても、4失点はいただけない。ボールの失い方が悪かったし、奪われた際の準備がまだまだでした。(最終ラインの)スライドだったり、ボランチが下りてきて広島の5枚(1トップ+2シャドー、両ウイングバック)に対応するはずだったが、なかなかハマらなかった」(鎌田)
 
「ゲームコントロールという意味で未熟だった。実際に前でボールを奪えて、イケイケになってしまったと選手たちとも話した。一番の反省点は、そのせいでブロックを作る判断が少しだけ鈍ってしまったこと」(渡邉監督)
 
 では、ポジティブに捉えられる面はどこにあったか。今回の一戦では、失点を怖れてズルズルと最終ラインが下がってしまう悪癖は改善されていた。コンパクトさが保てたことで中央の強度は高く、前述したように前線からのプレスも効果的に機能した。それは守備面だけでなく、高い位置でのカウンター発動が可能になるという点でも大きな意味を持っている。
 
「第1ステージの途中、連敗していた時は押し上げが足りていなかった。ビデオで改めて確認したし、選手だけのミーティングでも話題になったらしい。ラインを上げることでコンパクトさを保つことは攻守で武器になる。今はCBを中心に実践してくれている」(渡邉監督)
 
 そうなると、ワンランク上を目指すために必要なのは……。苦手とする3-4-2-1をベースとする相手への対策と、展開に応じて選手たちが「行くべきか、引くべきか」の判断を正確に下してオンとオフの切り替えをスムーズにすること。この2点が鍵となりそうだ。
 
 最後の最後で追い付かれた第1ステージの5節・横浜戦のあとで「上位定着への階段は一段飛ばしでは上がれない」と主張した。あの時も"ゲームコントロール"に問題提起している。それでも今回、結果は敗戦に終わったものの、強豪への階段を着実に上がっていると感じられる試合に、全員が手応えを感じているのだろう。試合終了後にユアスタに響いたチャントが、それを如実に物語っている気がした。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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