ベトナムに辛勝もセットプレーに怖さがないのは致命傷。最終予選を通して改善されないのが…【編集長コラム】

2021年11月11日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

なぜ三笘をベトナム戦で使わなかったのか

攻撃陣がいまひとつの日本代表。南野も決して本調子ではなかった。写真:JFA

 この日のベトナムの出来からして、日本は絶対に勝たないといけないゲームだった。つなぎが雑で、高さや強さがそこまであるわけでもない相手だったのだから、スコア、内容ともに圧倒すべき試合だったが、結果は1-0。消化不良の感は否めなかった。

 ワールドカップの最終予選は結果がすべてであり、その点でアウェーでの勝点3獲得はポジティブに受け止めたい。それでも素直に喜べないのは、試合運びがいまひとつで、相変わらず采配に工夫がなく、セットプレーで得点の匂いがしないなど、課題がかなり目についたからだ。

 なにより気になったのは単調気味の攻撃。先制点を決め、幻のゴールもあった右ウイングの伊東は確かに相手の脅威になっていたが、CFの大迫はポストプレーが光るもゴール前で精彩を欠き、左ウイングの南野は1アシスト以外に目立った働きはなかった。途中出場の浅野、古橋もあまり見せ場はなく、チームとしての決定機は決して多くなかった。

 仕掛けや組み立ての局面でリズムを生み出せていないように映るのが左サイドバックの長友だ。深い位置でボールを持っても、"縦への突破からのクロス"という一択で幅が感じられなかった。また、センターサークル付近でのボールをトラップする角度、パスを出す場所、それらが雑に映り、攻撃をむしろ遅らせている原因になっているようにも見えた。

 セットプレーに怖さがないのも致命傷で、ここからチームの得点力を一気にアップするのは難しいのかもしれない。選手のコンディションが万全ではなく、準備期間が短いのも承知している。守備陣は冨安を軸に奮闘していたベトナム戦は最悪の試合だったわけではないが、それでも……と思ってしまう。
 
 最終予選を通してここまで改善されないのが、後半の試合運びではないか。ホームのオマーン戦とオーストラリア戦、さらにアウェーのサウジアラビア戦は試合のペースを握れないまま失点を喫し、アウェーの中国戦、今回のベトナム戦は攻めきれず、いずれも苦しい展開を余儀なくされている。

 だからこそ森保監督の采配が鍵となるわけだが、選手起用を見てもここまでは良い意味での驚きがない。なぜクラブで結果を出している三笘を、このベトナム戦で使わなかったのか。ならば、なぜ招集したのか、という疑問さえ浮かんでしまう。

 試合を支配するという点でも森保監督の采配には相変わらず物足りなさを感じる。もっとも、この時点でそんな批判をしても意味はないだろう。最終予選の同組でもっとも力が劣るだろうベトナム戦でさえ"保守的な采配"だった森保監督に、そもそもポジティブな驚きを求めるのは酷なのかもしれない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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