魂のコーチング。相模原の不動のボランチ川上竜は極限状態でも叫び続ける。「それを止めたら自分は終わる」

2021年10月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「やれることをやらないと後悔する」

攻守両面でタフに戦う川上。パンチ力あるミドルや正確なフィードも武器とする頼れるボランチだ。写真:滝川敏之

「右! 右!」
「まだ行かないでいい!」
「いいよ、今!!」

 ゲーム形式のトレーニングで、相手のビルドアップに対し、川上竜は熱心な声掛けで守備時のポジショニングを整えようとする。

 実際の試合でも90分間、そうやって言い続けるのだろうか。それはそれでかなりシンドイのではないのか――こちらの疑問を投げかけると、SC相模原の不動のボランチは「めっちゃ、キツイです(笑)」と正直に明かす。

「後半とか、自分自身がポジションを取ったり、行って戻ったりをするだけでも、けっこう限界なので」

 それでも、自分から発信することは絶対に止めない。どれだけキツかったとしても言い続ける。

「そういう選手がひとりいるだけでも、楽かなとも思いますし」

 自分のことは脇に置いといて、優先すべきはチームメイトだ。

「前の選手ってたぶん、迷いながらプレッシャーに行くのは、精神的にも体力的にも削られると思う。後ろからの声掛けがあるだけでも、楽なんじゃないかと」

 身を粉にして、コーチングする。「それを止めてしまうと、自分は終わってしまう」。フットボーラーとしての矜持だ。もしかしたら、自分の言っていることが間違っている場合もあるかもしれない。冷静に客観視することも忘れずに、どんな時でも「声をかけるのは意識するようにしています」。
 
 タフな役割を志願する。「全体が見えるのは、真ん中にいる選手だから」と進んで申し出る。――でもやっぱり相当辛いよね? と、しつこく繰り返せば、「やれることをやらないと後悔する。死ぬわけではないので、大丈夫です」と余裕の表情だ。

 J2で最下位に沈む相模原は目下、残留争いの渦中にある。次節はギラヴァンツ北九州の敵地に乗り込む。勝点1差の20位に位置する北九州は、川上にとっては昨季まで所属していた古巣でもある。

 少なからず思い入れのあるクラブと、残留をかけて争う。複雑な心境ではないだろうか。そうした感情は「もちろん、ゼロではないです」。ただ、センチメンタルな気分に浸っている場合でもない。相模原の一員として、自分は何をすべきか。

 川上は静かに、力強く言う。「勝ちたい。それだけです」。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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