長谷部アビスパ、“5年周期”に終止符。J1残留の舞台裏と、さらなる高みを目指す歩み

カテゴリ:Jリーグ

中倉一志

2021年10月18日

「勝利からの逆算」

6試合を残してJ1残留を確定させた福岡。ついに“5年周期”に終止符が打たれた。(C)J.LEAGUE

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 アビスパ福岡は10月16日、J1リーグ第32節のヴィッセル神戸戦で0-1と惜敗したものの、他会場の結果によりJ1残留が確定。“5年周期”(J1に昇格したシーズンに降格という経験が過去3度。そのサイクルはちょうど5年に一度)に終止符が打たれた。

「勝点50以上、10位以内」を目標に掲げるチームにあっては、ひとつの過程に過ぎないが、それも昨シーズン以来、クラブの歴史とファン、サポーターの記憶に残る試合を積み重ねてきた結果。アビスパはまたひとつ新しい歴史を築いた。

 それはフロント、クラブ職員、強化部、監督、チームスタッフ、そして選手たちが一体となって築いたものだが、とりわけ長谷部茂利監督の手腕によるところは大きい。

「勝利からの逆算」

 長谷部監督のチームマネジメントの基本はこの言葉に集約される。積み上げてきたもので勝利を目指すのではなく、勝利するために何を積み上げなければいけないのか、そのために一人ひとりが何をしなければいけないのかを徹底して問いかける。

 しかし苦手なことを強要するのではない。例えば守備。自分の特長を消して守備に力を割くのではなく、どのように特長を活かせば守備で貢献できるのかを問いかける。ピッチに立つ選手全員が献身的にプレーするのは、そうした結果によるものだ。

 リスペクトという言葉も長谷部監督には良く似合う。選手に対する言葉は常に丁寧語。練習中でもネガティブな声掛けはほとんどなく、「もっとこうしたら上手くいくよ」というようなポジティブなものが多い。また選手の疑問をうやむやにすることもない。

「シゲさんは選手ファーストの監督。質問すればちゃんとした答えが返ってくるし、変なモヤモヤが残らない。試合に出ていないと、どうしても選手はモチベーションが下がってしまったり、練習でもちゃんとやらないと、ということが起こり得るが、アビスパにはそういう選手が全然いない」(宮大樹)

 根底にあるのは、監督、コーチ、チームスタッフ、選手それぞれの関係は上下関係ではなく役割を分担しているという考え方。監督の仕事も役割の一つだと話す。
 
 そうしたマネジメントに加えて、繊細な観察眼と綿密な準備がチームを躍進させた原動力になっている。以前、選手起用について次のように話してくれたことがある。

「向上が見られたら試合で発表するべきだと考えている。けれど、向上しきっているのを待っていたら時間がないので、『向上してきたな』『ここで使ったら成功するぞ』『試合で発表できるぞ』というタイミングで使ってあげたい。ただし、親心だけではなく、勝つために、誰の、何のパワーを使ったらいいのか、どの能力をゲームで披露してもらったらいいのか、そんなふうにいつも考えている」

 そのために、練習中にピッチで何が起きているのか、何をしているのか、どのように考えているか、何ひとつ見逃さない。ずばりと当たる采配は「神采配」と紹介されることもあるが、「雰囲気で何となく使えそうだなということでは起用しない」と話すように、すべてに明確な理由がある。
 
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