フランスのパリSGが世界中で話題沸騰である。現地時間８月10日にバルセロナを退団したリオネル・メッシの獲得を発表したからだ。
 
　今夏はそのメッシに加えて、ジョルジニオ・ヴァイナルダム（←リバプール）、アシュラフ・ハキミ（←インテル）、セルヒオ・ラモス（←レアル・マドリー）、ジャンルイジ・ドンナルンマ（←ミラン）を獲得。2017年夏に加入したネイマールとキリアン・エムバペを含め、信じられないような豪華絢爛の陣容が完成している。
 
　2011年５月にカタール投資庁の子会社である『カタール・スポーツ・インベストメント （QSI）』 に買収されたパリSGは、実質的にカタールのサーニー王族（国家）が保有するクラブ。この10年間はオイルマネーをふんだんに投入し、まさに金に糸目を付けぬ戦力補強でチームを成長させてきた。結果ついには、ネイマール、エムべぺ、メッシという当代屈指のアタッカー、CBとしては規格外の人気を誇るS・ラモス、世界最高峰のGKに限りなく近づいているドンナルンマと、まさにスター軍団を誕生させたのだ。
 
　パリSGがスター選手を乱獲するのは、もちろん何よりもまず「勝利」のためだ。リーグ・アンは昨シーズンこそリールに覇権を譲ったとはいえカタール資本になって以降の10年で７回優勝とほぼ一強状態で、いまだ優勝経験ゼロのチャンピオンズリーグ制覇がクラブの悲願。今夏の超大型補強はビッグイヤー獲得に向けた本気度が伺える。
 

　ただし、パリSGがスター選手を買い漁るもう１つ大きな理由がある。『フランス・フットボール』誌のフランソワ・ヴェルドネ記者は、『ワールドサッカーダイジェスト』誌のコラムで以前こんな内容を綴っていた。
 
「パリSGはスタープレーヤーを買い漁るのは、2022年のカタール・ワールドカップのためだ。各国代表チームのスターがパリSGの選手であれば、大会の広告塔として存分に活用できる。カタールの王族たちは、それを誇らしげに眺めることだろう」
 
　例えば新シーズンは、エムバぺ、ネイマール、S・ラモス、ドンナルンマ、そしてメッシという５人が並んだパリSGの看板広告が生まれるかもしれない。彼らのユニホームを代表チームに変えれば、たしかにそのままカタール・ワールドカップのPR素材にもなりうる。「カタール・ワールドカップにはこんなスター選手たちが出場します」という表向きのメッセージの裏には、「彼らは全員がパリSGの選手です」というカタール王族のエゴが込められているわけだ。
 
　QSIとパリSGの会長を務めるナセル・アル・ケライフィ会長は、カタール王族と繋がりが深く、カタール・ワールドカップ組織委員会でも要職にある人物。スター選手の獲得はもちろん、ネイマールやエムバペに退団の噂が持ち上がるたびに「絶対に放出しない」と公言して憚らないのは、パリSGのためはもちろん、カタール・ワールドカップのためでもあるのだ。
 
　契約が残り１年のエムバペはすでにレアル・マドリーと個人合意したとも伝えられ、今夏もしくは来夏の移籍が囁かれる。しかし、アル・ケライフィ会長は慰留に全力を尽くすだろう。パリSGのため、そしてカタール・ワールドカップのために。
 
構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部