鹿児島&宮崎キャンプで見えた新監督のプレシーズン采配
コロナ禍に加え、東京五輪も開催予定の2021年シーズンは先行き不透明な部分が多い。2月26日の開幕から序盤戦はいきなり過密日程となるだけに、スタートダッシュを切るためにはプレシーズンにできる限り、完成度を高めなければならない。となると、やはり指揮官続投のチームが圧倒的に有利なのだが、監督交代のあったクラブがそれを言い訳にできるわけではない。急ピッチで戦える集団を作らなければ、序盤戦の出遅れを引き起こしかねない。
そういう意味で、興味深いのがセレッソ大阪と清水エスパルスだ。ご存じの通り、2019~20年の2シーズンはミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が指揮を執り、5位・4位と着実に順位を上げ、今季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフ出場権を獲得した。目に見える成果を出した名将との契約延長に踏み切らなかったことで、セレッソサポーターからはクラブ批判が起きたほどだ。
キャプテン・清武弘嗣も「サポーターの方々の気持ちは、昨季が終わる前から僕自身もすごく感じていました。ユン(・ジョンファン/ジェフ千葉監督)さんからロティーナと、ここ4年間は『セレッソとしてこうやっていく』という方向性を示してくれた時間だったので、不安になる気持ちも分かります。でも(監督が)変わった以上、僕たちはやるしかない。ふたりの守備を継続しつつ、攻撃的にできれば理想です」と攻守両面の融合に力を尽くすことを約束した。
その第一歩となった宮崎キャンプ。4日の徳島戦を見る限りでは、チーム全体がタテに速くなり、シュート意欲を高めた印象だ。1得点・1アシストの活躍を見せた豊川雄太も「みんなの意識は前に向いているのかなと思います。前に行く回数も多いですし、トライする分、ミスは増えますけど、前へのパスは増えているのかなと思います」と意識の変化を代弁する。そのうえで堅守をブラッシュアップできればベストだが、昨季の主力組以外のメンバーが出てくると、完成度が一気に下がるという現実も見られた。
新指揮官の傍らで長年、仕事をしてきた白沢敬典通訳が「レヴィーの考えや練習方法は以前と全く変わっていません」と語るように、ミニゲームを繰り返して戦術を落とし込むクルピ流はかつて香川真司(PAOK)や乾貴士(エイバル)らがいた頃と同じだという。こうしたアプローチはポジショナルプレーを徹底的に叩き込み、各選手の守備時の立ち位置に細かくこだわってきたロティーナ流とは大きく異なる。その違いが、チームをどう変貌させるのか。清武の言う理想を追い求めるトライはまだまだ続きそうだ。
【J1】各チームの2021年シーズン予想フォーメーション