【岩本輝雄】現代サッカーのトレンドを表現。横浜FCの松尾佑介の“えぐり方”がエグい

カテゴリ:連載・コラム

岩本輝雄

2020年08月19日

松尾佑介、この名前は憶えておいたほうがいい

ベルマーレ戦では2ゴールのハイパフォーマンス。抜群の決定力でチームを勝利に導いた。写真:滝川敏之

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 先週末の横浜FCとベルマーレの“裏天王山”は、4-2のスコアでホームの横浜FCが勝利。前半の20分までに4点を奪うゴールラッシュを見せた横浜FCで、大きなインパクトを放ったのが、2ゴールを挙げた松尾佑介だ。

 J1初得点となる1点目はスピードを活かしたドリブルシュートから。2点目は松浦のクロスを正確にトラップして左足でぶち込む。いずれもファインゴールだったね。

 特筆すべきはそのサイドでの「突破力」だ。欧州のサッカーシーンでもそうだけど、現代サッカーでは個の力でサイドをいかに攻略するかがひとつのトレンドになっている。その意味で、松尾のサイドからの“えぐり方”は素晴らしいと思う。

 スピーディに縦に抜けるのはもちろん、斜めに切れ込んでいくカットインの鋭さもある。的確にスペースを見つけて、そこに迷いなく侵入していく。外から中に入っていく松尾に対して、相手は急いで対応に来る。そこを剥がせばゴールに近づけるのは当然として、一方で相手を引きつけることになるから、味方がフリーになる。いずれにしても、松尾の突破は様々な形でチャンスをもたらしているのは間違いない。

 J1を見ても、スピードのある選手はたくさんいる。でも、その武器を上手く活用できている選手は意外と少ない。松尾は、自らのストロングポイントを理解していて、それをどう使えば効果的なのかもよく分かっている。試合を重ねるごとに、存在感が増しているのもうなずけるよ。

 仕掛ける際のポジショニングも工夫がなされているよね。相手が4バックなのか、5バックなのか、試合の状況に応じても、微妙に立ち位置を変えてスタンバイしている。おそらくそれは、下平監督のおかげでもあるはず。ディテールにこだわった指導に定評のある指揮官の下でプレーできていることで、その能力が最大限に引き出されていると思う。
 
 そう考えると、改めて下平監督の手腕も見事だと思う。現状のJリーグはいろいろと制限があるなかで開催されていて、ピッチ上の声もよく聞こえてくる。それは監督の指示も同じで、下平監督の指示は詳細かつ的確。僕もそれを聞くのが楽しみなんだよね。

 とにかく、松尾は特大の成長が期待できる選手のひとりだ。今後は研究されるだろうけど、縦にも中にも自在に、しかも速く行けるから、相手も手を焼くはず。横浜FCはビルドアップを持ち味としていて、確実にボールは前に運ばれてくるから、攻撃のキーマンでもある松尾がより力を発揮しやすい環境でもある。

 シーズン開幕当初は、自身初めてのJ1の舞台とあって、少なからず戸惑いもあっただろうけど、何試合かこなすことで、本人もJ1のスピードや強度を把握して、上手くアジャストできているように見える。こういう場合は、こうすればいいって、要領が分かってきたんだろうね。実戦をさらに積んでいけば、もっと活躍できるはず。まだそこまで知名度はないかもしれないけど、「松尾佑介」、この名前は憶えておいたほうがいいと思うよ。

【J1第10節PHOTO】横浜FC4-2湘南|松浦、松尾、一美、松尾!圧巻の4得点で横浜FCが湘南との裏天王山を制す!!
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