今季はユン・ジョンファン新監督を迎え、悲願のJ1復帰を目指す千葉だが、ここ４戦は１分３敗。全42試合と長丁場のJ2で、まだ９試合を終えたばかりという見方もできるが、３勝１分５敗の15位と苦戦を強いられている。本来、守備を強化してきたはずのチームが直近の４試合で計６失点を喫しているのも心配事で、本拠地フクアリでは２月の開幕戦以来、勝利から見放されている。

　それでも「ホームで勝てないのは申し訳ない気持ちで一杯です。勝点３を積み上げること。僕らはそれを目標にやりたい」と前を向くのは、オンライン取材で話をしてくれた守護神の新井章太だ。

　新井といえば、昨季までJ1の川崎に所属。セカンドGKとして過ごす時間が長かったとはいえ、17、18年のリーグ連覇を経験し、昨季はルヴァンカップ初制覇に大きく貢献。決勝での活躍を認められ、大会MVPにも輝いた。だからこそ個人的には驚きの移籍でもあった。

　もっとも常に「前を見て挑戦したい」と語っていた男にとっては考え抜いたうえでの選択。新体制発表会では「『新井がいるから大丈夫』と思わせるようにしたい。目標は昇格。そして“怖いチーム”を作ること」と意気込んだ。

　そんな新井の挑戦には川崎でのチームメイトも「覚悟を持って決めたと思いますし、僕らも負けられない」（谷口彰悟）、「チームが変わっても切磋琢磨できる仲間」（小林悠）とエールを送っていた。

　新天地では背番号１を身に付け、正守護神としてゴールを守る。豊富な経験に裏打ちされた予備動作、厳しい練習で培われた的確なセービング能力を駆使してファインセーブを見せるなどパフォーマンスは良好だ。それでも本人は課題を口にする。

「すべての試合に出させてもらっていて、感覚は悪くないとは思います。ただ実際に勝てていないのが現実なので、勝たせるためのゴールキーピングだったり、もっともっとチームをまとめたい。やれないことはないです。

　不運な失点が多いですが、問題はあるはず。切り替えの遅さが原因で、ペナルティエリアに侵入されてPKを与えてしまったり、一人ひとりの判断ミスもあると思います。耐えなくてはいけないし、そうやっていかに勝点を取れるかで先は変わってくる。個人としても、チームとしてもいろいろやっていきたいです」

　やや不運な判定でPKを奪われたシーンもあり、「僕らも人生を懸けてプレーしているので言いたいことはあります。もう少しそういうところは……」と胸の内を明かすが、次戦の町田戦（８月９日・アウェー）を含めて守護神としての想いは変わらない。

「最終的にゴールに来たボールはすべて止める気でいますし、そのための練習をしています。コースを限定してくれれば、止められる準備はしてあるよと、いつも周囲に伝えてもいます。

　去年まで出場機会は限られていましたが、なにも変わってないんですよ。ただ勝負強さは必要かなと。そこは自分に求めていきたいです」

　そして声、コーチングでの貢献も忘れない。

「GK陣やそういう役割を持った人たちが、どんどん声をかけて雰囲気を良くすれば良いと思う。次の試合に向けてどんどん良くしていこうと」

　チームとして必要なのは「１対１の局面で勝つこと。そうしないと勝利はなかなか難しい状況になってしまう。１対１の局面で一人ひとりがベストを尽くすことで、良い攻撃もできると思う。一つひとつをしっかり追求していきたい」と力強く語る。

　熱く、常に努力を惜しまず挑戦する――どんな状況でも強い気持ちを持ち続ける“漢”新井は最後尾から熱くチームを盛り立てる。千葉に来た意味、自らの存在価値を証明する戦いはこれからも続いていく。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）