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「ポジショナルプレー」「トランジション」…言葉に囚われれば本質を失う【小宮良之の日本サッカー兵法書】

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2020年05月27日

「メッシやC・ロナウドには簡単にひっくり返される」

数々のタイトルの獲得してきたモウリーニョの名将たる所以は「理論」ではない。(C) Getty Images

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 スペインで指導者ライセンスを与えるベテランプロフェッサーが、苦言を呈していたことがあった。

「最近は指導者からマスコミまで、溢れた情報に飲まれている。言葉に先走って、囚われてしまっている傾向がある」

 サッカーは、果てしなく分析ができるスポーツである。戦略を回す戦術があって、その戦術は戦略となって戦術を回す。例えば、「攻撃的な勝利」という戦略の中で「サイド攻撃」という戦術があって、「サイド攻撃」を成功に導くための「サイドバックとの連係」などの駆け引きがあって、その駆け引きは際限なくあって、さらに細分化できる。

 自軍の特色や敵軍の特徴、状況次第で、無限に戦略と戦術は存在し、理論は汎用化できない。

「同じプレーは、二度は決して起きない」

 それがサッカーの真理である。

 しかし、その不確かなスポーツであるが故に、論理化し、成功率を上げる作業も求められるのだろう。そのため、言語化し、わかりやすく解きほぐそうとする。ポジショナルプレー、ハーフスペース、ファイブレーン…最近では専門的な言葉を使う人も多くなった。

 ただ、言語化することで事象を閉じ込め、本質を失わせることもある。

 例えばポジショナルプレーは、ポジション的な優位を指している。相手よりも攻守両面で優位なポジションをとって、攻めているときは守りの、守っているときは攻めのポジションをそれぞれがとることに本質がある。しかし、想定したポジション的優位性は、リオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドには簡単にひっくり返される。様々な想定外。結局はそれへの臨機応変な対応が問われる。

 言葉は、物事を理解するために必要である。しかし理論は理論として強固になるほど、脆さが出る。サッカーは多様であり、理論は理論になった時点で、形骸化する。分かった時には、抜け殻になっていて、抜け殻を議題にやんやと語るだけになる。

 戦術的ピリオダイゼーションというのも流行っている。「サッカーはカオスであり、フラクタルである」という正体不明の一部を解明した画期的な理論である。しかし、これを選手に伝えて、これを実践しただけで強固なチームになるのなら、世話はない。
 
 
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