東福岡伝説の3冠…あの雪の決勝で、勝負師・志波芳則は一世一代の賭けに出た(後編)

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年12月28日

どこで負けてもおんなじ。全部終わる。それが選手権なんだ

黄色いボールが空を舞うなか、世紀の決勝はタイムアップを迎えた。高校サッカーの歴史に金字塔が打ち立てられた瞬間だ。(C)SOCCER DIGEST

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 途轍もないプレッシャーがかかっているかと思いきや、3冠達成まであと「1」に迫った東福岡のイレブンは、驚くほど落ち着いていた。むしろ普段以上に試合前の練習で笑顔を見せ、リラックスし切っている。
 
 1997年度の高校選手権が幕を開けた。「これはあっさりやらかすかもしれない」と直感した。1年間ずっと見続けてきたヒガシは、恐ろしいまでに成熟した勝者になっていた。
 
 志波芳則監督は、大会を目前に控え、どんな舵取りを心掛けていたのだろうか。
 
「全日本ユースを獲ってからは、もうずっとマスコミが3冠だ、史上初だみたいな感じだった。福岡県内だけじゃなく、全国的にどこに行ってもね。ただ、選手権はやはりひと味違う大会なんだ。ましてや我々はシード権がなくて、1回戦から戦わなければいけない挑戦者。そこだけはずっと強調してましたよ。3冠うんぬんではなく、俺たちはここで勝つために1年間やってきたんだ、勝負しないでどうする、といった具合で。じたばたしてもしょうがないからね。選手たちも思い切り力を出し切ろう、自分たちのプレーに集中しようとだけ考えていたんじゃないかな。1回戦でも準決勝でも、負けたらおんなじ。全部終わる。それが選手権なんだと。いい感じでひとつにまとまっとったよね。3冠は、気づいたら獲っとった(笑)」
 
 1回戦で富山一を5-0、2回戦で情報科学を4-0で退け、3回戦では国見を相手に2-0の完勝劇。準々決勝で逗葉を5-0、準決勝では丸岡を3-1で撃破し、危なげなく決勝に駒を進めた。丸岡戦では0-1のビハインドを背負って前半を折り返すなど、苦しい局面もあるにはあったが、80分間トータルで試合を振り返れば、いずれの試合も圧倒的な力量差を見せつけての快勝だった。左サイドの破壊王・古賀誠史は県予選で膝を傷めて、30分以内限定出場を余儀なくされたが、その穴を榎下貴三がそつなく埋め、図抜けた娯楽性を提供しながら進撃を続けた。
 
 それでもやはり、3回戦の国見戦はひとつの難関だった。例年通り優勝候補の一角を担い、4年前にこの檜舞台で0-8の大敗を喫した因縁の相手だ。ファンの注目度もすこぶる高く、満員札止めで立見が続出した三ッ沢球技場は、異様な興奮と熱気に包まれていた。
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