日本代表でも高まる期待! 宇佐美貴史の「進化」をフィジカル面から解き明かす

2015年06月01日 澤山大輔

「ブレない体幹」が可能にした清水戦のファインゴール。

G大阪で素晴らしい活躍を続ける宇佐美。進化の理由をフィジカル面から探る。 (C) SOCCER DIGEST

 宇佐美貴史選手については、以前にもフィジカル分析をさせていただきました。「なぜ、ドリブルで抜き去ることができるのか」という観点からです。その頃に比べて、フィジカル的にさらに向上しているように思います。以下、具体的に見ていきましょう。
 
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 身体のキレが増していることを象徴するようなゴールシーンがありました。5節の清水戦です。ペナルティエリア内で後方からのロングフィードを受ける際に、右足を高く上げてトラップしてボールを精緻にコントロール、そのままスムーズに反転してゴールを決めた一連のプレーです。
 
 通常、あそこまで足を高く上げると、ボールコントロールはもちろん、その後の反転をスムーズに行なうのも、着地してすぐにシュートに向かうのも難しいものです。
 
 宇佐美選手は極めて難易度の高いプレーを、なぜ、完遂させることができたのか。
 
 体幹のバランスを大きく崩すことなく、股関節の外旋をうまく使えているためでしょう。こうした股関節の柔軟性は、ホッフェンハイム時代(2012-13シーズン)と比べて明らかに変化が見られるところです。
 
 パスを受けてからゴールに至るまでの一連の流れを改めて確認すると、体幹は蹴りたい方向を向いたまま股関節が外旋していることが分かります。
 
 あれほど高く右足を上げながら、ボールを落としたい方向にコントロールし、なおかつ重心が支持基底面(※)内に保たれている――。これは『インナーユニット』と呼ばれる筋群がうまく使えているためだと考えられます。(※編集部・注/身体を支える基礎となる底面。いわゆる土台)
 
 インナーユニットとは、腹横筋・横隔膜・骨盤底筋群・多裂筋という筋肉を指します。なかでも多裂筋は、背骨を安定させる重要な筋肉です。
 
 脚が動く前にどの方向に背骨を動かすか、事前に働く部位となるのがインナーユニットで、宇佐美選手はそれらの筋肉の"協調的"な動きが非常にうまくできていると考えられます。つまり、動作の中で正しく使われるべき筋肉が、正しく働いているということです。
 
 これにより一定の部位に余計なストレスがかかることなく、関節が正しい方向に動き、必要な動作が効果的に行なわれるのです。神経・骨格筋系が、最も効率的かつ安全に機能を最大限発揮できる状態にあるわけです。
 
 これらの筋が動作の事前に準備されているからこそ、体幹軸が大きくブレることなく、ゴールまで決められたと言えるでしょう。清水戦の得点は決して偶然の産物ではなく、宇佐美選手だからこそ実現可能なプレーであり、彼の優れたフィジカルを証明するシーンと言えるでしょう。

次ページ「足に吸い付くドリブル」も下部体幹や股関節の柔軟性があってこそ。

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