「我々の命に価値はないのか!」強行開催のコパ・アメリカ、開幕3日で登録選手の9%がコロナ陽性の異常事態「もはやサッカーの大会ではない」【現地発】

2021年06月16日 リカルド・セティオン

「すべてはお前らのせいだ。もし誰かが死んだらどうする?」

紆余曲折を経てブラジル開催となったコパ・アメリカ。開幕後も選手から批判の声が…。(C)Getty Images

 コパ・アメリカが開催して3日が経った。

 パンデミック真っ只中でのブラジルでの開催は、大会前から各方面で危惧が叫ばれていたが、どうやら今それが現実になりつつある。

 南米サッカー連盟(CONMEBOL)とブラジル保健省は毎日選手スタッフなどにPCR検査を行なっているが、大会3日目にしてすでに52人の陽性者が出ている。その内訳は運営スタッフ19人(多くはリオなどの大都市のスタッフ)、チームスタッフ10人、選手が23人である。1日平均にするとなんと17人。また選手は各チーム26人の10チームで計260人だが、そのうちの23人となると、9%に近い陽性率となる。これは驚きの数字だ。

 ペルーは4日目にブラジルと対戦するが、チームの柱であるMFのクリスティアン・クエバも陽性になり出場停止となった。今後も中心選手が欠けるチームは出てくるだろう。
 

 選手3人、スタッフ1人の感染者を出したボリビア代表のCFマルセロ・モレーノは自身のSNSにPCR検査を受けるチームメイトの写真と「52人陽性」の記事を張り付け、強い抗議のメッセージを載せた。

「CONMEBOLよ、見てみろ! すべてはお前らのせいだ。もし誰かが死んだらどうする? 選手の命に価値はないのか!」

 これに対しCONMEBOLは強い不快感を表明し、敬意がないとして何らかのペナルティを科すことも考えている。

 元ブラジル代表GKのタファレルは、皮肉を込めてこう発言している。

「もうこれはサッカーの大会ではない。一人の感染者も出さなかったチームを勝ちにすればいいのではないか」

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
 

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