【柏】異次元のペースで得点量産の要因。チームメイトや指揮官が明かすオルンガの“根底にある凄み”とは?

2020年10月25日 須賀大輔

決してゴールを奪うためだけに独りよがりなプレーをしているわけではない

G大阪戦でもネットを揺らしたオルンガ。23試合で23得点と、ハイペースでゴールを量産中だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ24節]G大阪2-1柏/10月24日(土)/パナソニックスタジアム吹田

 やはり、この男はただ者ではなさそうだ。

 この日は前半に訪れた数々の決定機を攻撃陣が逃し続けたことが勝点を奪えなかった一因としてあるため、手放しに得点を喜んで評価することは難しいが、オルンガは集中力を高く保ち、強い警戒を寄せてきていた相手守備陣が見せた一瞬の隙を突いた。いとも簡単にゴールネットを揺らすあたりは、ハイペースで得点を重ねている最中のこのエースならでは。80分、ルーズボールに対しクリスティアーノが競り勝ち、江坂任に渡ることを予測すると、素早く裏に抜け出して得意の左足で豪快に沈めた。

 終盤の時間帯での高い集中力と決定力。まさにエースストライカーとしてのゴールだった。これで今季のリーグ戦、23試合に出場して23ゴールと異次元の得点ペースを維持。残り10試合、今季の得点王獲得はさることながら、1シーズンの最多得点記録(36点)更新にも期待がかかる。

 ただ、オルンガという選手を説明するにはゴールという要素だけでは足りない。

 これだけのペースでネットを揺らし続けているわけだから、ゴールや攻撃のことばかりに注目が集まるのはある意味仕方がない。"23試合・23ゴール"という数字のインパクトが大き過ぎるため、そこばかりがフィーチャーされることは本人も受け入れている部分はあるだろう。しかし、オルンガはしっかりとした献身性とフォア・ザ・チームの精神を携えており、決してゴールを奪うためだけに独りよがりなプレーをしているわけではない。
 
 以前、ポジションを争うライバルである呉屋大翔がこんなことを言っていた。

「ミカ(オルンガの愛称)が凄いのは、チームとしてやらないといけないことや守備をしっかりとこなしたうえであれだけ結果を残していること」

 チーム全体が組織的に機能することを重んじ、特に守備の部分においては毎試合、相手ごとに、選手ひとり一人にはっきりとした役割を与えるネルシーニョ監督も、オルンガのその姿勢を高く評価。その積み重ねがチームメイトからの信頼やチーム内での立ち位置につながっていると話す。決定力と献身性の両方を持っているのが柏の14番だ。

 そして何よりも、オルンガ自身がよく口にするのは「ハードワーク」の6文字。今季開幕前に行なったインタビューの席でも「どんなときもハードワークをすることは約束する」と言い、前代未聞の超過密日程のなかでどれだけゴールを重ねてもケニア人ストライカーはその要因を「ハードワーク」だと強調する。チームのために走り、仲間のことを思ってプレーすることが、最終的に自分のゴールにつながることを誰よりもオルンガ自身が理解している。

 ゴール前にいるだけ恐怖を与え、左足を振り抜くだけで脅威を及ぼす。そんな圧倒的な存在感を身に付けながら、その根底にあるのが献身性やフォア・ザ・チームの精神、そしてハードワークだと知ると、オルンガの見方もまた変わってくるかもしれない。ただやっぱり、ゴールを決めている姿が最も輝いている瞬間であることは言うまでもないが――。

取材・文●須賀大輔(フリーライター)
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