【新潟】失われた信頼を取り戻すために…是永社長が明かす“2選手解雇”の舞台裏「判断ミスだった」

2020年10月20日 大中祐二

ファビオは事件発生後6試合に出場していた

「道義的に許されるものではなかった」と自らの判断を謝罪する是永社長。写真:大中祐二

 J2アルビレックス新潟の所属2選手が9月17日に道路交通法違反を起こし、10月19日付けで契約解除となった。

 昨年ブラジル全国選手権2部で得点ランキング2位となり、今季加入した新潟でもここまで5得点のFWファビオが酒気帯び運転で取り締まりを受けたのが、9月17日の午前1時から2時のこと。後日、FWペドロ・マンジーが同乗していたことが明らかになり、彼も任意捜査の対象となっていた。

 問題を大きくしたのは、クラブがすぐに公表せず、トレーニングへの参加や試合出場といった通常の活動を認めたことだった。

 これについて19日の15時から記者会見に臨んだ是永大輔代表取締役社長は、「道義的に間違った判断をしてしまった。Jリーグクラブは地域の象徴。社会的に高潔な存在であることが求められる。新潟を代表するクラブのアルビレックス新潟のトップとして、大きな責任を感じている」と謝罪した。

 会見に先立ち、同日の午前9時から行われた臨時取締役会で関係者の処分が決定した。ファビオ、ペドロ・マンジー両選手は本日付で解雇、是永社長は本日から2020年12月31日までの減俸処分・100%の減額。また玉乃淳ゼネラルマネージャー兼強化部長のけん責処分、ただし、本日から2020年12月31日までの報酬の100%を自主返納することになった。

 今回の事件が公表されたのは発生から1か月後の10月15日21時前にクラブの公式HPにおいてだった。是永社長は「任意捜査中は事実関係が明らかになるまで、捜査対象者のプライバシー保護の観点から公表のタイミングについて慎重になる必要があった」と釈明した。
 
 またこの1か月間、2選手を謹慎処分とせず、ファビオは事件発生後6試合に出場するなど通常活動をさせたことについて、是永社長は「捜査が完了するまでは推定無罪の考え方に則って、捜査対象者のプライバシーに配慮した」と説明。しかし、「法的に問題がなかったにせよ、道義的に許されるものではなかった。判断ミスだった」と反省の言葉を繰り返した。

 事件の2日後、ファビオ、ペドロ・マンジーともにメンバー外となった第20節・徳島戦(0-1で敗戦)で、チーム最多の7得点を挙げていたFW渡邉新太が右足第5中足骨を骨折してしまった。全治3か月で、今季中の復帰は厳しい。そして今回、FW2人がチームを去る。

 10月に入って3勝1敗と勝点を重ね、前節終了時点で5位の新潟は、J1昇格圏内の2位徳島との勝点差は9ポイント。ピッチの外の嵐のような状態の中、大望は果たせるだろうか。FWの緊急補強について、19日の会見で是永社長は、必要であれば検討する考えを明らかにした。

 15時からビッグスワンで始まった会見は、約2時間にも及んだ。その中で是永社長の謝罪、経緯説明は冒頭での約10分間。残りは質疑応答となった。一度の質問につき問いは2つまでとされたが、質問の回数そのものは制限されず、また質問が尽きるまで是永社長は答え続けた。

 初動を誤った今回の事件で、クラブの信頼は大きく失墜した。復権の道は、今日の会見のような胸襟を開いた取り組みによってのみ、開けるはずだ。そして、その道のりは長く、険しいことを覚悟しなければならない。

取材・文●大中祐二(フリーライター)
 
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