【甲府】「5-3-2」へのシフトで光明を見出す

2015年03月15日 橋本啓(サッカーダイジェスト)

新システム導入は攻守両面で効果を生む。

アドリアーノと2トップを組んだ阿部拓。前線で起点となり、後方からの攻め上がりを促進した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 1-0で試合終了の笛を聞いた瞬間、甲府の樋口靖洋監督は満面の笑みでガッツポーツを繰り返した。
 
【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・2節
 
 広島との開幕戦(●0-2)には、アドリアーノを頂点に、阿部拓馬、石原克哉を1.5列目に並べた「3-4-2-1」で臨んだ。しかし、起点になるはずのアドリアーノが潰され、「相手どうこうより、自分たちがやりたいことが上手く出せなかった」(樋口監督)。「なにかしらの変化が必要」との想いを抱えた指揮官は、攻撃に厚みをもたらそうと前線のターゲットを2枚に増やした「5-3-2」へ布陣を変えて名古屋との2節に挑んだ。
 
 結果的に、この采配は"吉"と出た。前線へのボールを2トップ(アドリアーノと阿部拓)の一方が収め、もう片方が最終ラインの背後を狙ってマークを分散させたため「前で時間を作れた」(樋口監督)のだ。それに伴い、後方からの攻め上がりも促され、「ふたりが収めてくれるから、前へ攻め上がれた」(石原)と、周囲も手応えを口にする。
 
 さらに、新システムによる波及効果は、守備面にも表われた。「この試合で一番ハードワークしてくれた」(山本英臣)と称えられた中盤の3人(石原、稲垣祥、新井涼平)が、前からの守備、プレスバックなどのタスクを全う。「ふたり(稲垣と石原)がパスコースを限定してくれたので、狙いを絞った守備が上手くはまった」(新井)と、組織的なディフェンスが機能した。
 
 ただ、喜んでばかりはいられない。攻守両面で収穫はあったが、この日の1点は阿部翔平の直接FKから奪ったもの。攻撃に推進力を生み出すも、「流れのなかから得点が生まれる感じがなかった」(山本)のも確かで、「つなぎの段階でミスが多く、やり切る場面が作れていない」(樋口監督)。
 
 一筋の光明が見えたとはいえ、この日の戦いは樋口監督が目指す「粘り強い守備からコレクティブな攻撃を仕掛ける」コンセプトの一端に過ぎない。ようやくスタートラインに立ったチームがやるべきことは、まだまだ多い。
 
取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)
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