【堂安律/この一枚】さらなる飛躍を確信させた鮮やかなフィニッシュとチーム戦術

2020年06月03日 徳原隆元

攻撃的MFとして力を発揮しやすい状況でプレー

右サイドからカットインし、自慢の左足を一閃。相手選手のチャージも間に合わないほど、見事なフィニッシュだった。一連の写真:徳原隆元

 2018年2月16日、当時、フローニンヘンに所属していた堂安律はアウェーでVVVフェンロと対戦。結果は引き分けに終わった一方で、先発出場した堂安の高いパフォーマンスと、この日のチーム戦術を見ると、若き日本人MFがさらに上のレベルでプレーできる可能性を秘めていることを予感させるものだった。

 開始2分に先制されたフローニンヘンだが、15分に堂安のゴールで同点とする。試合後、堂安は「ファーストタッチが完璧に決まった。あれで決めないと左利きの選手ではない」と振り返る。その時は左サイドから右サイドに流れていて、味方からのグラウンダーのパスを受けてカットインすると、強烈なシュートをフェンロゴールに突き刺した。相手選手のチャージも間に合わないほど、ボールを受けてからの一連の動きは実にスムーズで見事なフィニッシュだった。

 ただ、堂安が上のレベルでプレーできると感じた理由は、何もゴールを挙げたからではない。左サイドを主戦場にプレーした彼は、とりわけ攻撃面での活発な動きが目を引いた。

 ゲームメーカーとしての存在感を発揮できたことに関して、堂安は「左SBがもともとCBの選手で1対1に強かったので、(対峙したフェンロの選手のケアをSBに任せて)自分が攻め残るパターンが多かった」と説明してくれた。堂安がより攻撃に集中できる戦術がエッセンスとなっていたのだ。

 情報化社会となった今、サッカー界でも対戦相手の研究が容易になり、対策のために選手へと課される仕事は多岐に渡る。しかし、フェンロ戦での堂安は自陣近くの守備を味方DFに託し、攻撃的MFとして力を発揮しやすい状況でプレーをしていた。
 
 対戦相手のレベルにもよるが、フローニンヘンでの堂安は、自らの特長を発揮しやすい戦術でプレーできる存在だった。この戦い方は、指揮官と味方の選手が堂安の攻撃力を認めた証と言えるだろう。周囲から一目置かれるレベルにあり、つまり実力でその環境を手に入れたのだ。

 この戦術方針を聞いて、もはや堂安はフローニンヘンでやるべきことが終わり、次のステップに進むべき選手だと確信した。結果、2019年にエールディビジの強豪PSVアイントホーフェンへと移籍を果たすことになる。

 PSVでもフェンロ戦の時のように、指揮官や周囲の選手たちから絶対の信頼を勝ち取ることができれば、堂安にはさらに上のレベルが待っていることだろう。日本サッカーのために歩みを止めるな、堂安!

取材・文・写真●徳原隆元

【PHOTO】オランダの名門PSVで奮闘中!日本代表の主軸を担う、堂安律のキャリアを振り返り!
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