「卑劣だ!」「最悪のシナリオ」スイス1部クラブが“給与カット”を拒否した9選手を電撃解雇!

2020年03月28日 サッカーダイジェストWeb編集部

「銃口を選手に向けるのか!」と選手協会会長が怒りの声明

過去に2度スイス・リーグを制したFCシオン。コロナ禍の9選手解雇が波紋を呼んでいる(写真は2017年10月当時)。(C)Getty Images

 新型コロナウイルスの脅威が欧州全土に広がるなか、各国のリーグ戦は中断・延期を余儀なくされ、プロクラブの経営基盤をも揺るがす事態に陥っている。

 そんななか、スイスからやるせないニュースが舞い込んできた。国内1部リーグの中堅クラブ、FCシオンが9人に及ぶトップ登録選手を一斉解雇したというのだ。理由は、先行き不安な情勢下にあって選手側に給与カットを打診したところ、その9選手が拒否したためだった。米ネットワーク『ESPN』などが伝えている。

 クラブのクリスティアン・コンスタンティン会長は「迷いはなかった。誰もが努力しているなかで、努力をしようとしない選手たちを留め置くつもりはない」と辛辣なコメント。さらに「彼らにはこう言ったよ。『カットされた後の賃金でも十分じゃないか。それでも毎日生命を救っている看護師たちの2~3人分の賃金より上だろう』」といったエピソードを明かし、物議を醸している。

 これを受けて怒り心頭の声明を発表したのが、スイス・リーグ選手協会のルシアン・ヴァローニ会長だ。「これまでも問題を起こしてきたシオンとコンスタンティン会長のやり口とはいえ、あまりにも卑劣で、許しがたい行為だ」と断じ、次のようにまくし立てた。

「危機に直面したなら、まずは被雇用者である選手たちをケアするのが経営者だろう。なのに彼らは銃口を選手たちの頭に向け、24時間以内に減額を受け入れるかどうか返事をしろと脅した。そして、選手たちが当然有する権利としてノーと答えたら、すぐさまクビを切ったんだ。最悪のシナリオだ!」

 加えてヴァローニ会長は「この一件が明るみとなるまで、選手協会内で『クラブの窮地をみんなで救う手立てを考えよう』と話し合っていた」と舞台裏を明かしたうえで、「でもそれも水泡と帰すかもしれない。きわめて劣悪な事例となってしまった。クラブと選手の間に溝を作り、嫌なムードを助長するサインとならなければいいが……」と不安視する。

 
 ドイツではボルシアMGやボルシア・ドルトムントなど複数クラブの選手たちが給与カットに応じたと報じられているが、その一方、スペインのバルセロナでは選手側が難色を示しているとの情報もあり、かならずしもすべての交渉がスムーズに運んでいるわけではない。

 それゆえにヴァローニ会長は「もっとクラブ内で議論を重ね、経営努力をしたうえで結論を出してほしい。容易く給与カットの答に至らないでもらいたい」と嘆願。そして「試合がないからといって、選手たちが仕事をしていないとでも言うのか? 自宅で隔離状態にありながら健康に気を配り、自主トレーニングに精を出している。その事実をもっとよく考えるべきだ」と主張している。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、サッカー界のこうした側面にも、暗い影を落としている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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