【指揮官コラム】チェンマイFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|ここには、あるはずのモノがない!

2015年01月14日 サッカーダイジェストWeb編集部

トライアルではホワイトテープで背番号を作り…。

練習場でチェンマイFCの会長と。この場でクラブと正式に契約をかわした後の一枚。

 新天地チェンマイに到着してから10日が経った。
 
 僕は昨年9月の終わり頃から始めているウォーキングとジョギングをチェンマイで再開した。さすがに日本では、12月も過ぎると寒さに勝てず中断。テーマは「気持ちの良い朝」なので、体調の悪い日、天気の悪い雨の日はやらず、自然に走りたい時に走っている。
 
 そしてこの日は、約45分間のジョギング。ジワっと良い汗が出てそろそろ膝に負担が掛かりそうだな、というタイミングで家の近くにあるスタバに辿り着き、iPhoneを使ってこのコラムを書き出したのである。
 
 ここ数日間、チェンマイは連続の雨、今朝も曇りがちな空からポツリと小雨が落ちてきた。そんな天候にもかかわらず、僕は連日の雨についに我慢できず、外に出て走らずにはいられなかった。それがチェンマイでの10日目の朝なのである。
 
 前置きが長くなったが、1日にチェンマイに到着した後、5日に新シーズンに向けたトレーニングがスタートした。思い返したいが、初日のトレーニングはまったく覚えていない……。もちろんノートをめくれば思い出せるが、その必要もない。1日1日前進することが大切なのだから。
 
 7日には入団を希望する選手たちによるトライアルと、ディビジョン2のチームとのトレーニングマッチを行なった。トライアルには日本からもJリーグ経験者が参加。日本だけではなく各国からのトライアルブレーヤーをしっかりチェックした。
 
 今までのところ、トレーニングをはじめとしたチームのマネジメントは順調そのもの……、と言いたいところだが、実情はちょっと違う。
 
 すべてをお伝えしたいが、それは企業秘密。何年後かにゆっくり話そうじゃないか――。とはいえ、せっかくなのでひとつだけ。7日のトライアルでは当然ながら紅白戦を行なったのだが、番号付きのビブスが1色1セットしかない。急遽、無地のビブスにホワイトテープを貼り付けて背番号を入れたのである。
 
 ここでは、日本では必ず用意されているものが当たり前のようにあるわけではない。そうなると、その欠けたものを埋めるための工夫が必要になる。
 今の社会は本当に便利になり、苦労がいらなくなっている。このコラムもパソコンがなければ、携帯の通信機能を使って送ることができる。僕が30年以上前にブラジルのサンパウロに留学していた頃は、パソコンメールもなかった……。2年間の留学生活を思い返すと、寂しさと不安から半年以上はホームシックにかかっていた。
 
 今は便利なうえに、お金もかからない。ブラジル時代、僕は日本に電話がしたくて200ドルを持って日系人の家に電話を借りに行ったものだ。
 
 今ではほとんどの人が携帯電話を持ち、そしてお金をかけずに電話ができる。スカイプやLINEでは、話すことはもちろん顔も見ることができる。サッカーもそうだ。いつの間にか何でも用意されている。環境整備がしっかり進み、日本では選手が恵まれた状況でサッカーを楽しめるようになっている。 
 
 良いことでもあり不安もある……。ここチェンマイには、あるはずのモノがない。しかし、失いかけている大事なモノがあるような、見つかるような気がして練習に明け暮れる日々だ。
 
 現在、クラブにあるボールは15個で、ビブスは黄色1色13枚(チーム管理のビブス)。マーカー40個、日本ではお馴染みの工事現場などでよく見る大きめのコーンはない。
 
 ただグラウンドは、練習場は、しっかりある。
 
 そこから今日の一言。
「グラウンドは嘘をつかない」
 グラウンドとボールがあれば、そしてやる気を持った選手がいれば、工夫してチームを成長させることはできる。そう信じて今日のトレーニングの準備をする。
 
グラウンドは正直です。
 
2015年1月10日
三浦泰年
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