「イタリアは10年前のペップを真似ている」「哲学だけじゃ勝てない」名将カペッロが独特なサッカー観を語る

2020年02月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

カペッロが考えるリバプールが強い理由

百戦錬磨の名将カペッロが現代サッカー界に対する自身のサッカー観を説いた。 (C) Getty Images

 ジョゼップ・グアルディオラがバルセロナの黄金期を築いた時のプレーが、サッカー史に名を残したことは間違いない。そのサッカーは多くの指導者たちに影響を与えた。

 だが、イタリアの名将ファビオ・カペッロは、自国の監督たちがかつてのグアルディオラの影を追い求めすぎと警鐘を鳴らしている。イタリア紙『Gazzetta dello Sport』によると、カペッロは「今のイタリアで私は闘っているんだ」と述べた。

「グアルディオラのようにプレーしようという傾向がある。だが、それをやっている者は、グアルディオラが10年前にやっていたことをまねていることに気づいていない。その間にグアルディオラはもう変えていて、彼のチームはプレーの仕方が違っているんだ。マンチェスター・シティは縦にプレーし、いつも相手のエリアに入る。イタリアの潮流に抗っているのだが、分かってもらえないんだ」

 ひとつのキーワードとなるのが「ポゼッション」だろう。だが、カペッロは「ポゼッションというが、どのエリアでボールを持つかだ」と主張した。

「相手のエリアの近くで効果的でなければいけない。そうじゃなければ、何の役にも立たないんだ。パスの数と同じだよ。ボールタッチの80%が横や後ろへのパスではまったく無意味だ」

 また、カペッロは現在のバルセロナについては、「好きじゃない。ボールに触れるばかりだからだ。相手エリア周辺でUを描き、天才(リオネル・メッシ)が何かを引き出して試合を解決してくれるのを待っているだけだ」とも話している。

「以前のバルセロナのプレーは好きだったが、今はそうじゃない。とにかく、大事なのは試合を読むことだ。グアルディオラはジョゼ・モウリーニョと対戦したバルセロナとインテルの試合で、ある時点でジェラール・ピケにCFをやらせた。そして得点し、もう1ゴールはオフサイドで取り消し、さらに別のチャンスもつくった。優秀な監督は介入し、試合を変えることができるんだ」

 さらに監督の力についても力説している。カペッロは、「違いをつくるのは選手だが、監督にもそれができる」と口にした。

「監督の試合を読む力、そこに介入し、変えて、抗い、ずる賢く、そして直感的である力だ。データなんかじゃない。わたしは自分の目で見ることを望んできた。対戦相手は直接研究すべきだ。そうすればクオリティーや欠点が分かる。映像には限界があるんだ」

 ほかにも、カペッロは、「プレースタイルは勝利につながり得るが、プレーの哲学だけでは何にも勝てない。『スペクタクル』とか『チキタカ』という言葉が人は好きだけどね」と語った。

「1996年に初めて私がレアル・マドリーを指揮した時は、フェルナンド・イエロにロベルト・カルロスというロングボールに優れた2選手がいた。それでなぜ、一発でたどり着けるところにボールを運ぶのに10本のパスが必要なんだ?

 ユルゲン・クロップのリバプールが勝ちだしたのは、アリソンのような偉大なGKとフィルジル・ファン・ダイクみたいな偉大なCBを獲得してからだ。彼らが入ってから、リバプールはダイレクトにモハメド・サラーにボールを送ることができる。その武器を正しく使っているんだ」

 カペッロの意見は、ファンや識者にどう映っただろうか。『Gazzetta dello Sport』の電子版アンケートでは、「10年前のグアルディオラのコピー」との主張に、1100人を超えるユーザーの62.5%が「間違えている」と回答した。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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