【アジアカップ激闘録】日本、戴冠!「92年」決勝レポート

2015年01月01日 週刊サッカーダイジェスト編集部

「ワクさえ、外さなければ絶対に入る」

36分、ゴール正面から決勝ゴールを高木がゲット。大一番で大きな仕事をやってのけた。 (C) SOCCER DIGEST

 森保が警告2枚で出場停止、GK松永は準決勝で退場処分を受け、守備に若干の不安を抱えながら、日本はキックオフを迎えた。
 
 相手の前線には速さとキープ力を持つ選手が並んでおり、数的優位を保っても油断はできない。とくにサウジは序盤から速攻狙いだったため、中盤で速攻を食い止めることが日本に与えられた課題だった。そして、攻撃陣が相手DFラインを崩すことができるか……。
 
 10分過ぎから2分に1回のペースで、日本はサウジ陣内深くに侵入する。23分には、右CKから福田が決定的なヘッドを放つ。リスタートの連続から次第にペースをつかんだ日本に、ゴールの予感が漂う。そして36分、スタンドのボルテージは最高潮に達した。
 
 左サイドをオーバーラップした都並へ、ラモスからパスが渡る。都並はフォローしたカズへ戻す。瞬時に、カズと高木の間でアイコンタクトが交わされた。こうしたシーンでは、ボール保持者に寄ることの多かった今大会の高木だが、ここでは違った。パスがくることを予測し、ゴール前で待ち構える。
 
 反対にサウジは、ボールがカズへ戻ったため、DFラインを押し上げていた。完全に逆を突いた高木は、まったくのフリーでラストパスを受ける。もう、敵はGKしかいない。
 
「相手のGKは小さい。ワクさえ外さなければ絶対に入る」
 高木は胸でトラップし、落ち際をボレーで合わせた。地を這うようなボールは、GKシュジャーにセーブするチャンスを与えない。ベンチ前で熱狂する日本選手、紙吹雪の舞うスタンド。ゴール、ゴールだ!
 
 この得点で、日本は勢いに乗った。懸念された守備も、中盤の底に入ったラモスが最終ラインをサポートし、きっちり役割を果たす。ケガを押して出場した吉田は、持ち前の守備力で、日本の危機回避に最善を尽くした。
 
 攻撃陣も、残り時間はゆっくりとボールを回していればよかったのだが、あくまで追加点を狙った。60分、北澤から福田、カズとつないでサウジを翻弄し、73分、カズが鮮やかなボレーでゴールを脅かす。そして90分、ラモスのパスを受け、北澤がフィニッシュ。数秒後、2度目の紙吹雪がフィールドに舞った。
 
 勝った!
 
「ダイナスティのときは、まだ何も見えてこなかった。今回は少し見えてきたよ」
 
 誇らしげに、カズは語った。
 
 日本代表の行く手に、アメリカ94がはっきりと見えてきた。
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