【大宮】「ガンガン行っていいですか?」60分間の停滞を破った三門雄大の“直訴”。劇的弾の舞台裏

2019年06月16日 佐藤香菜(サッカーダイジェスト)

一時先発から遠ざかっていたこともあった三門の奮闘で2連勝!

決勝弾は、「みんなが繋いでくれた」ゴールだと話した三門雄大。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J2・18節]大宮2-1岐阜/6月15日(土)/NACK5スタジアム大宮
 
「怖いもので、得点という大きな財産を得た時に、それまで苦労していたことを忘れてしまうようなゲームになった」
 
 監督会見の冒頭で、大宮の高木監督が口にした言葉だ。
 
 冷たい雨が降り注ぐNACK5スタジアム大宮で、J2リーグ18節、大宮アルディージャとFC岐阜の一戦は、1‐1のまま、停滞ムードが長い時間続いていた。
 
 22位で最下位の岐阜をホームに迎えた大宮は、開始早々の15分にMF奥抜侃志が2戦連発弾を決め、先手を取っていた。

「点を取って少し気持ちが楽になったのか、それとも、これならいけると思ってしまったのかわからないですけど。攻めてはいましたが、(さらに)点を取るために、というところでどうだったかは少しクエスチョンだった」と高木監督は首をひねる。また同じく、副キャプテンのMF三門雄大も「ちょっと不甲斐ないというか、(先に)1点は取ったんですけど、(勝利を収めた前節)京都戦の時よりアグレッシブさもなくて、自分としては納得できなかった」とチームの出来に疑問を呈した。

 そうしたコメントに象徴されるように、ボールを奪っても岐阜のプレッシャーによって阻まれパスがつながらず、次第にリズムは相手側へ移っていく。そして30分、大宮は右サイドでMF奥井諒のパスが岐阜のDF北谷史孝にカットされると、そこからMF粟飯原尚平にボールを運ばれ、ゴール正面からFW山岸祐也に同点弾を決められてしまった。そこから追加点を奪うことはできず、前半は1‐1で折り返した。

 ハーフタイム、ロッカールームでは高木監督から喝を入れられた。
 
「もっとアグレッシブに」「相手よりも早い準備を」「もう一回、トレーニングしてきたことをしっかり発揮しよう」と伝えられチームは、見違えるようなパフォーマンスを見せる。前半はシュート4本にとどまったが、気持ちを入れ替えて臨んだ後半は同14本の猛攻で岐阜ゴールに迫った。
 
 前半はボランチでプレーしていた三門は、FW大前元紀とMFダヴィッド・バブンスキーが入った69分から左のウイングバックに。ボランチが主戦場の選手だが、「ガンガン行っていいですか?」と高木監督に直訴し、了承を得ると、激しい上下動を何度も繰り返して左サイドからの攻撃を活性化させ、ゴールを目指した。それでもなかなかゴールをこじ開けられず、引き分けで終了かと思われたアディショナルタイム、ついに試合が動く。
 
 右サイド奥井からのパスを受けたMF小島幹敏がドリブルでエリア内に侵入し、中央へパスを送る。ボールの軌道線上にはバブンスキー、その奥には三門がいた。バブンスキーが絶妙なスルーで三門へパスを通すと、右足で叩いたボールは相手DF、GKをすり抜け、右サイドのゴールネットを揺らした。
 
「勝点3を取りたいと思ったなかで、非常にいいボールとスルーを仲間がしてくれたので、あとは"決まってくれ"と思いながら」「丁寧に流し込んだ」という三門は、気持ちで奪った決勝点を、「みんなが繋いでくれた」ゴールだと表現した。
 
 先発メンバーが流動的に変容する今季の大宮で、三門自身もしばらく先発から遠ざかっていた時期もあったが、スタメン、サブに関係なくチーム全員が必死に練習に取り組んでいることで、チームの雰囲気は昨季よりもいいと言う。14戦連続無敗のなかで得点の重みを改めて感じた大宮が、今後どんな試合を見せてくれるのか、期待したい。

取材・文●佐藤香菜(サッカーダイジェスト編集部)
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