衝撃的だったファルカオ獲得の一部始終を【マンU番記者】が振り返る

2014年09月23日 マーク・オグデン

シティに待たされたファルカオ陣営は痺れを切らし…。

当代きってのストライカー、ファルカオのユナイテッド移籍は、こうして実現した。 (C) Getty Images

 今夏の移籍市場での最大のサプライズは、ラダメル・ファルカオのマンチェスター・ユナイテッド入りだろう。英国史上最高額の移籍金5970万ポンド(約101億円)で加入したアンヘル・ディ・マリアのビッグディールも衝撃的だったが、予想を裏切る意外性でファルカオの移籍はその上をいった。
 
 ファルカオの移籍形態は、買い取りオプション付きの1年間のレンタル。レンタル料は600万ポンド(約10億2000万円)で、来夏の買い取り額は4350万ポンド(約74億円)だ。ユナイテッドはオプションを行使して、モナコから買い取ることになるだろう。
 
 まさしく急転直下、複数のクラブの思惑が交錯しながら期限ぎりぎりのタイミングで決まった移籍劇は、スリリングだった。
 
 そもそもファルカオの獲得を強く望んでいたのは、マンチェスター・シティだった。モナコのモンテカルロで、チャンピオンズ・リーグのグループステージ組合せ抽選会が開かれたのが8月28日。ここでシティのチキ・ベギリスタインSDと、ファルカオの所属先モナコの代表者が移籍について話し合いを持った。つまり、移籍マーケットが閉まる4日前の段階では、シティがファルカオ争奪戦をリードしていたのである。
 
 ところが、シティはある問題を抱えていた。ファイナンシャル・フェアプレーの規定違反で5000万ポンド(約85億円)の罰金とともに、移籍市場での支出制限や年俸総額の制限といったペナルティーを科せられていたのだ。そのため、ファルカオの獲得を実現するためには、ファーストチームから少なくとも1人を売却する必要があった。
 
 シティはスペイン代表FWアルバロ・ネグレドの売却に動いた。ネグレド自身もスペインへの帰国を望んでおり、実際、バレンシアとの交渉が進んでいた。ところが、詰めの段階で難航する。その間待たされたファルカオ陣営はついに痺れを切らし、ユナイテッドに話を持ちかけたのが、期限最終日の2日前、8月30日のことだった。
 
 ユナイテッドはこの話に食いついた。週給26万5000ポンド(約4500万円)という破格の条件を提示して、話し合いを一気に推し進めた。週給26万5000ポンドは、新キャプテンになったウェイン・ルーニーの週給30万ポンド(約5100万円)に次ぐ厚遇だ。
 
 実は、リバプールとアーセナルがファルカオの獲得に動きながら断念したのは、高額な報酬がネックとなったからだ。一方、ファルカオとはいわば相思相愛だったレアル・マドリーは、プレミア勢との入札合戦を嫌って、早い段階で争奪戦から降りている。
 
 こうした経緯をたどり、ユナイテッドが電撃的にファルカオを射止めた。ルイス・ファン・ハール新監督を迎えて再スタートを切りながら、プレミア開幕から2分け1敗と低調な滑り出し。メディアの批判も高まる一方の窮地から、藁をもつかむ思いで繰り出した起死回生の一手が、ファルカオの獲得だったとも言える。
 
 いずれにしても、さまざまな思惑、事情が複雑に絡み合った末に成立した、衝撃のビッグディールだった。
 
【記者】
Marc OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン元監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
【翻訳】
田嶋康輔
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事