悲願のJ1昇格へ死角なし!チームに根付く競争意識が町田ゼルビアを一段上に押し上げる

2019年02月28日 郡司 聡

誰が出場してもおかしくないポジション争いが、チーム力をさらに一段階上へと引き上げる

開幕戦で決勝点を挙げた富樫(9番)。新エースの活躍も町田にとってポジティブな要素だ。写真:滝川敏之

「J1昇格」を目標に掲げた2019シーズンの開幕を前に、相馬直樹監督はこう言っていた。
 
「昨季以上のハイレベルな競争になるかもしれない」
 
 昨季最終節の"リターンマッチ"となったJ2開幕戦は、その言葉を実証するかのような結果となった。
 
 1-0で町田が勝ち切った東京V戦の決勝点は63分。「あまりプレッシャーを掛けにこなかった」(奥山政幸)東京Vの隙を突き、自陣から奥山がボールを運び、前方のロメロ・フランクへパスを供給。奥山からのパスを受けたフランクは、難しいパスを前方を走る富樫敬真へとつなぎ、最後はペナルティーエリア内から富樫が右足のシュートをブチ込んだ。
 
 ロングカウンターの出発点となった奥山は、下坂晃城との左SBのポジション争いを制して、開幕戦のピッチに立った選手。試合2日前の紅白戦では、奥山と下坂が交代で主力組の左SBを務め、どちらが先発のピッチに立っても不思議ではない状況だった。
 
「シモ(下坂)も良いプレーをしているし、どちらが先発のピッチに立てるか分からない状況。これからもお互いに切磋琢磨しながら自分自身の成長につなげていきたい」(奥山)
 
 強力なライバルの存在がフルタイム出場を目指す奥山の刺激になっていることは間違いない。

 さらに富樫の決勝点を導いたR・フランクも、井上裕大や森村昂太らと、ボランチのポジション争いをしている選手だ。キャンプからメンタル面も充実し、気迫あふれるプレーを披露していたR・フランクだったが、東京V戦の準備期間には出産を控えていた夫人に付き添うことが多く、コンディションが万全ではなかった。それでも、途中出場から「チームのために何ができるか」(R・フランク)を追求した結果、交代出場で攻撃にアクセントを加え、決勝点に絡む形でチームの勝利に貢献している。
 
 クラブ史上最高順位を4位に更新した昨季は、選手間の激しい競争がチームの"総合力"を高める原動力となっていた。前述の紅白戦も、サブ組が主力組を押し込む展開となり、「セカンドチームが元気であることは、強いチームの証」と考えている相馬監督にとっては、喜ばしいチーム状況が続いていた。
 
「競争がチームを強くする」は、相馬監督の持論でもある。誰が出場してもおかしくないポジション争いが、チーム力をさらに一段階上へと引き上げる――。試合に飢えた選手たちのハイレベルな"競争"が、今年も大きな原動力となるに違いない。
 
取材・文●郡司聡(フリーライター)
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