総力戦のPOで磐田が完勝できた理由。名波監督は東京Vの"癖"を見抜いていた

2018年12月10日 サッカーダイジェストWeb編集部

大一番で若手を抜擢し、来季以降への布石も

残留決定後に開口一番「ホッとした」と語った名波監督。堅実な試合運びでチームを勝利に導いた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1参入プレーオフ決定戦]磐田2-0東京V/12月8日(土)/ヤマハスタジアム

 総力で勝ち取ったJ1残留だった。

 怪我の中村俊輔と川又堅碁をベンチに座らせ、公式戦6試合ぶり先発の小川航基を起用。この若手が抜擢に応えた。41分に山田大記のスルーパスに抜け出し、相手GKと1対1に。倒されてPKを得ると、自らゴール左へ沈めた。「(31節の)広島戦のPKは右に蹴ったので、相手も映像は見ているはず。今回は左に蹴った」。80分には田口泰士が約18メートルのFKをゴール左に突き刺し「イメージ通り」と振り返った。
 
 1点先制するまで、緊迫感がヤマハスタジアムを包み込んでいた。名波浩監督は明かす。「高い位置からボールを奪いに行くことを守備の基本としながら戦った。それが100パーセントはまっていたわけではなくて、J2のリーグ戦でも他のクラブが(東京Vの)カウンターを食らっているシーンもあったので、そこは最大限ケアしながらやった」。慎重な試合運びだったが、41分に先制すると後半は磐田ペースになった。

 指揮官はスカウティングで東京Vの"癖"を見抜いており、勝利へのシナリオを明確に描いていた。「シンプルに外(サイド)やワンツー、コンビネーションで一気に突破してくるシーンがJ1では多い。でも、特に東京Vはもう一回ボランチで時間を作ったり、横パスが2、3本入る。十分に戻る時間が出来て、大きく破綻しなかった」。磐田はJ1で例年なら残留安全圏と言える勝点41を獲得。J2で6位の東京Vとの実力差は歴然で、対策も万全とあれば、勝利が転がり込んでくるも当然だろう。2-0で完勝した試合後、選手たちと名波監督は安堵の表情を浮かべた。

 今季は負傷者が続出した。3月にアダイウトンとムサエフが長期間戦列を離れた。中村も4回離脱し、8月に新里亮が今季絶望。攻撃の軸だったアダイウトンと中村を欠くと、川又ひとりでは打開できず得点力不足に陥った。ムサエフと新里の離脱以降は、22節の浦和戦で4失点、25節の名古屋戦で6失点、29節・清水戦の5失点など大量失点を食らった。最後まで「怪我人が多すぎた」と指揮官は頭を悩ませていた。
 
 ただし、光も見えた。東京V戦では、FWに21歳の小川航、ボランチに22歳の上原、DFに20歳の大南拓磨が先発した。各ポジションで持ち味を出し、勝利に貢献した。今季のリーグ戦で1得点に終わった小川航は「納得できるシーズンじゃない。プレーオフまで行ってしまった。もっと結果を出せるはず」と巻き返しを誓っている。

 指揮官は常々、「若手の成長に蓋をしない」と語っている。目指すは自前で若手を育て、その選手が海外挑戦などで抜けても絶えず次が出てくる、新陳代謝を続けるチームだ。
 
 プレーオフに回った今シーズンは思うような結果を残せなかったが、すべてがマイナスだったわけではない。厳しく苦い残留争いの経験は、若手の成長をさらに加速させるはずだ。
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