J1後半戦へのビジョン|C大阪編|ドイツ流の「ゲーゲンプレス」と陣容再編でスタイルを再構築

2014年07月06日 前田敏勝

ドイツ育ちのイタリア人指揮官が明確に示したスタイル。

14節終了時で13位と低迷するC大阪。新指揮官が提唱する新たなスタイルが上昇への呼び水となるか。 (C) SOCCER DIGEST

 リーグ14節の浦和戦でいいところなく敗れ、4勝4分け5敗と負け越しで中断期間を迎えたC大阪。3週間のオフが明けた直後には、ランコ・ポポヴィッチ監督の解任という衝撃のニュースで、波乱の再始動を迎えた。
 
 そして、1週間のフィジカルトレーニング中心の練習を経て、和歌山・串本キャンプ初日の6月17日に、マルコ・ペッツァイオリ新監督の就任が発表された。ドイツ育ちのイタリア人指揮官は、発表当日の夜には来日。翌18日から『ペッツァイオリ・セレッソ』が本格的にスタートした。
 
 ゴイコ・カチャルがブンデスリーガのハンブルクに復帰、ミッチ・ニコルスがAリーグのパース・グローリーへ期限付き移籍することになるなど、チームはシーズン半ばでの陣容再編も余儀なくされている。ワールドカップに出場していた柿谷曜一朗、山口蛍、フォルランの主軸3選手が不在だったうえ、再始動後には、怪我などで別メニューを強いられる選手が続出。そのため、1週間のキャンプ中にC大阪U-18の選手を6人も帯同させたのだが、11対11のゲーム形式の練習が十分にできない状況も生まれるなど、満足にトレーニングを積めたとは言い難い。
 
 それでも、ドイツでは育成年代を中心に指導を行なってきたペッツァイオリ監督の求めるサッカーの色は、新体制の始動初日から明確に示されていた。そのひとつとして挙げられるのが、前からのプレッシング。ドイツ仕込みの、いわゆる『ゲーゲンプレス』だ。「コンパクトにやることが大事」と強調する指揮官の狙いは、できるだけ相手ゴールに近い位置でボールを奪うこと。そのためにも素早い攻守の切り替えに、かなり重点を置いてトレーニングを行なっていた。
 
 この点については、キャンプ中にアシスタントコーチのひとりとして帯同していた羽田憲司C大阪U-18コーチも、「(守備は)レヴィー(クルピ元監督)がやっていたことに、少し似ているように思う」と感想を述べるように、近年チームが育んできたアグレッシブなスタイルに立ち返っていると言えるかもしれない。「やっていることはシンプル」(丸橋祐介)と、選手たちも、違和感なく、守備の形を構築できているようだ。
 
 また、キャンプ中には韓国人MFのキム・ソンジュンが、6月末にはタイの強豪ブリーラムで主力FWとして活躍していた平野甲斐が、それぞれチームに新加入。このふたりは、早速敵地で行なわれたミャンマー代表との親善試合にも出場し、平野は初ゴールも記録している。
 この新加入組に共通するのは、フィジカルの強さ。とりわけ暑いタイの地でも持ち前のハードワークで存在感を放ち、ACLでもゴールを決めるなど実績を残してきた平野は、ペッツァイオリ監督の志向するサッカーにマッチしている選手だ。日本ではまだそれほど知名度がないとはいえ、秘密兵器のひとりとして今後楽しみな存在だ。
 
 非公開試合や親善試合を含めて、新体制後4試合をこなした。新指揮官が挙げる現在の課題は、「最後のアタッキングサードでの、攻撃面の改善」だ。7月上旬には、ほぼフルメンバーが揃ってきたのは好材料とはいえ、去就が注目されている柿谷、ワールドカップからの再合流待ちとなっているフォルランといった主軸アタッカーが、ペッツァイオリ新監督のもとで実戦を経験できていないのは、C大阪のサッカーを再構築するうえでも不安なところ。
 
 システム、選手起用などを含めて、今の段階で全貌が明らかになっていない『ペッツァイオリ・セレッソ』は、今後どういうチームに仕上がっていくのか。まずは12日の天皇杯2回戦で、どんな姿を見せるのかに注目だ。
 
取材・文:前田敏勝(フリーライター)
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