J1後半戦へのビジョン|清水編|新システムで「ツインタワー」頼みから脱却へ

2014年07月03日 下館浩久

“アンカー”本田拓也を軸に「3ボランチ」に再チャレンジ。

14節を終えて9位につける清水。新システムの導入は、吉と出るだろうか。 (C) SOCCER DIGEST

 中断前のリーグ戦では5試合勝ちなし。ナビスコカップも3連勝後の3連敗で予選敗退となり、最悪のチーム状態で中断期間に入った。15日間のオフを経て、再始動した清水は地元で1週間のトレーニングを行なった後、6月22日からの御殿場キャンプに臨んだ。
 
 アフシン・ゴトビ監督は、リーグ再開までの4週間のうち、前半の2週間で選手のコンディションを上げ、メンタルや球際の強化を目的としたメニューを組んだ。キャンプでも戦術的な練習は取り入れずに1対1の対人プレーやヘディング、そしてクロスからのシュート練習など日頃からやっている練習に終始した。
 
 FWノヴァコヴィッチはスロベニア代表からキャンプ前日に日本に戻ったため、先に始動していた選手たちとのコンディションの差は明らかであり、不動のCBとして平岡康裕とともにリーグ全試合でフル出場しているカルフィン・ヨンアピンも怪我のために別メニューでの調整となっていた。こうした主軸のコンディションの影響も戦術練習に取り組めない理由だったかもしれない。
 
 ただし、キャンプ中のふたつの練習試合ではシステムにある変化が見られた。それが本田拓也のアンカー起用だ。2ボランチだった六平光成と竹内涼のふたりを「トップ下」に移行。前線に人数をかけて攻撃力アップを図り、本田からの展開力に期待する新システムを採用したのだ。攻撃時には「4-1-4-1」となり、守備時には「4-3-2-1」となる「3ボランチ」システムは、昨シーズン序盤にも試みたものの、その時はバランスが悪く失敗に終わっている。
 
 メンバーを一新して再チャレンジする今回の3ボランチは、本田が生命線となるだろう。昨シーズン途中、4年ぶりに清水に復帰した本田は、開幕当初からコンディションが上がらず前半戦は苦労したが、ここにきてコンディションも戻りつつある。練習試合のHonda FC戦では長短のパスを的確に配給。主力組で戦った前半はチームのリズムを作り出し、5-0の完勝に導いた。
 本田は前半戦の戦いを「メリハリがなかった」と、単調な攻撃と同じパターンで失点を繰り返す現状を分析していた。本田が中盤の底に入れば、最終ラインから中盤、前線へのつなぎ役として、あるいは忍耐が必要とされる場面での精神的支えとして、キャプテンの杉山浩太とともにその存在は大きなものとなる。
 
 慶応義塾大との練習試合では、ここまで目立つことのなかった若手FWの樋口寛規と柏瀬暁も得点を決めているが、これら若手の台頭も後半戦には必要不可欠な要素となるだろう。ノヴァコヴィッチと190センチ超の「ツインタワー」を形成していたFW長沢駿が、4月下旬に右膝前十字靭帯断裂の重傷で長期離脱。その後しばらく、その影を追って迷走していたチームは、「ツインタワー」頼みから脱却した新たなシステムで、後半戦への巻き返しを図ろうとしている。
 
取材・文:下館浩久(フリーライター)
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