J1後半戦へのビジョン|仙台編|持ち味の堅守速攻を磨き、苦手の「夏」克服へ

2014年06月29日 週刊サッカーダイジェスト編集部

チームの方向性が見えた7対5のトレーニング。

中断前の5試合は4勝1分けだった仙台。堅守速攻にさらに磨きをかけリーグ再開を迎えようとしている。 (C) SOCCER DIGEST

 静まりかえった陸上競技場のピッチに、選手たちの声が響く。「梁(勇基)、右から!」。「ヤナ(ギサワ)、ゴーゴー」。足を止める選手はひとりもいない。吹き出る汗を拭う間もなく、練習は続いた。
 
 6月18日から10日間、休みなしで続いた仙台の延岡キャンプ。4月途中に就任した渡辺晋監督にとっては、初のキャンプだ。体力強化を主眼に置いたなかでも、今後のチーム作りの方向性がはっきりと見えた。その象徴とも言えるのが、ハーフコートで行なわれた7対5のゲーム形式の練習だ。
 
 フィールドプレーヤー5人に、GKふたりを加えた7人のグループが守備側を担当。5人の攻撃側は、ボール奪取からのゴールを狙う。数的不利の攻撃側がボールを奪うためには、全員の連動した動きが欠かせない。守備側も猛プレスをかいくぐるために動き回る。5分間のゲーム中、休むことは誰も許されなかった。
 
 休めないのはゲーム中だけではない。頭と身体をフル回転させるこの練習の合間に、5分間の体幹トレーニングがある。約30分間、選手たちは身体をいじめ抜いた。梁が「本当にきつい」と漏らせば、CBの鎌田次郎は「仙台に来て、ゲームの合間に体幹をやったのは記憶にない」と険しい表情で汗をぬぐった。
 
 仙台のお家芸は堅守からのカウンター。7対5は、その武器を磨き上げるための鍛錬のひとつだ。ただ、目的はボール奪取だけではない。渡辺監督は「すべての練習に、攻守両面から見た目的がある」と明かした。
 
 リーグ戦では新潟に4連敗中。今シーズンは鳥栖に2戦2敗。前線から激しくプレスをかけてくる相手には、苦戦が続いている。運動量に自信を持つ相手を攻略するためにも、攻守にわたる連動性の向上とタフなフィジカルは欠かせない。7対5のトレーニングには、そうした意図が強く込められていた。
 さらに戦術練習では、縦への推進力を意識させた。カウンター攻撃の精度を上げるべく、少ない手数でフィニッシュまで持ち込む狙いだ。このキャンプでは、手倉森体制時代から続く堅守速攻スタイルを進化させるために、様々なメニューを取り入れた。
 
 キャンプ9日目の練習試合では、九州総合スポーツカレッジに11-0。九州保健福祉大には9-0で勝利を収めた。渡辺監督も「実力差がある相手とはいえ、選手たちは最後まで走り切っていた。あとはJ1のチームを相手に、どれだけ走れるか」と手応えを掴んだ様子だった。
 
 J1に再昇格した2010年以降、7月の月間成績は4年間で3勝8分け6敗と大きく負け越している。苦手とする夏に勝点を積み上げられるかどうか。延岡キャンプでの成果が試される。
 
取材・文:高橋宏磁(報知新聞社)
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