ロシアの夜空に、ルカ・モドリッチの咆哮が轟いた。
 
　現地時間６月21日のアルゼンチンvsクロアチア戦だ。第１戦をアイスランドと引き分け、後がなくなったアルゼンチンに序盤から攻勢を仕掛けられたクロアチア。それでも慌てず騒がず、均衡を保つ老練な試合運びを見せる。とりわけ際立ったのが、中盤の大黒柱モドリッチの振る舞いだ。卓越した戦術眼でゲームのリズムに変化を加え、徐々に主導権を手繰り寄せていく。
 
　迎えた53分、相手GKウィリー・カバジェロがバックパスの処理でとんでもないミスを犯し、アンテ・レビッチがラッキーな形で先制点を挙げる。その後もクロアチアはリトリートした守備で堅牢を築き上げつつ、鋭いカウンターで手数を出し続ける。そして80分、眩いばかりの輝きを放ったのがモドリッチだ。ゴール前中央20メートルの位置でボールを受けると、２フェイクを入れて右に持ち出し、豪快に右足を一閃！ 強烈なスライダーショットでゴールに突き刺したのだ。

 

　終了間際にイバン・ラキティッチがダメを押して、アルゼンチン相手に３－０の歴史的大勝。クロアチアは３位に食い込んだ1998年フランス大会以来、実に20年ぶりとなるラウンド・オブ16進出を決めた。
 
　欧米メディアが絶賛したのが、モドリッチのゴラッソである。英高級紙『The Independent』は「紛れもないワールドクラスのゴール」と評し、米スポーツ誌『Sports illustrated』は「モドリッチが大仕事！　驚愕の一撃でアルゼンチンの息の根を止めた」と称えた。そしてフランスのスポーツ紙『L’equippe』も「クロアチアの天才がアルゼンチンの野望を打ち砕く。阻止不能なスーパーゴールだった」と絶賛している。
 
　レアル・マドリーで栄華を極め、32歳と脂が乗り切っている稀代の名手。おそらくは代表チームでラストチャンスとなるメジャー大会で、悲願の初タイトルを掴み取るか。この"魔法使い"を中心軸に、バルカンの強豪は恐ろしいほど高次元にまとまっている。