【総体】頼れるエースが決勝で復権の一撃!瀬戸内の9番が大暴れを誓う

2018年06月11日 石倉利英

目指すは安部裕葵(現・鹿島)を擁して成し遂げた2年前の8強超えだ!

今予選は準決勝まで無得点。決勝でようやくゴールを決めただけに、本大会では初戦からの活躍が待たれるところだ。写真:石倉利英

 立ち上がりの前半6分、ゴール前でFW加藤竜大(3年)の足下にボールがこぼれた。シュートを打つかと思いきや、相手DFのタックルが来ているのを冷静に見極めて左へパス。「同じクラスなので、いると思って『絆』で出しました」というパスを受けたのは、FW川岸怜央(3年)だった。

 相手GKが素早く前に詰めてきていたが、「コースは見えていた」という。右足シュートで空いていたGKの足下を破り、瀬戸内に貴重な先制点をもたらした。その後、チームは追い付かれたものの、PK戦で広島皆実を下し、2年ぶり6回目のインターハイ出場を決めた。
 
 2月の新人戦で川岸は得点王に輝く活躍でチームの準優勝に貢献したものの、このインターハイ予選では準決勝まで無得点。しかし決勝の大舞台では、「ずっと点を取っていなかったので、1点でも取って力になり、チームを勢いづけようと思っていた」という思いを結果に結びつけた。

「いつもはポストプレーや、相手にボールを取られないプレーを心がけていますが、やっぱり勝つためにはゴールが必要なので、積極的にプレーした」。試合後に報道陣の取材を受けていると、チームメイトに「決勝の1点だけなのに!」とからかわれたが、ボールを収めて周囲の動きを生かすとともに、自らにめぐってきたチャンスを確実にモノにしてヒーローとなった。
 
 インターハイ予選が始まる前のプリンスリーグ中国でも調子が上がらず、一時は先発を外れることもあったという。それでも安藤正晴監督は「いまのチームは特に前線のポジション争いが激しいけれど、そのなかで奮起してくれた。良いプレーというよりも、できることを全力でやってくれ、と。無理をせず、味方に預けるプレーを献身的にやってくれた」と評価。見事に期待に応えた3年生FWの活躍を「最後にゴールにつながったのでよかった」と喜んだ。
 
「瀬戸内は走るチーム。延長に入っても負ける気はしなかった」という言葉通り、延長も含めて100分間、徹底してスペースを突くフリーランを続け、前線で愚直に身体を張った。

 PK戦では11人目、最後のキッカーに組み込まれた。5人目を終わっても勝敗は決まらなかったが、「PKが苦手なんです。早く決めてくれ、と思っていた」と笑顔で振り返る思いが実り、7人目で決着がついた。
 
 2年前、安部裕葵(現鹿島)を擁してベスト8まで勝ち上がった地元・広島での全国インターハイを、川岸はスタンドで応援していた。当時のチームを上回る成績を残すために、「まずは他のチームよりも走ること。パスワークなどの連係も高めていきたい」と語る。全国でも再び、粘り強く身体を張りながら、チームを勝利に導くゴールを狙う。
 
取材・文●石倉利英(スポーツライター)

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